眼鏡の恩返し
最終更新:2022/4/22
作品紹介
「昨日助けていただいた銀縁眼鏡です」そう言って、クラスメートの顔をしたそいつが俺の部屋で頭を下げていた。ちょっとした事故で落っこちた銀縁眼鏡を拾い上げた、その恩返しにやってきたのだと言う。けれども恩返しはなかなか達成されず、クラスメートの姿をした銀縁眼鏡を名乗るそいつは毎晩現れる。 思春期に遭遇しがちな人間関係のもやもやとか悪意とかのお話です、多分。 第二回 銀縁眼鏡文学大賞 https://kakuyomu.jp/user_events/16816927862556525274 参加用に書きました。
評価・レビュー
老若男女問わずに読んでほしい
「昨日助けていただいた銀縁眼鏡です」 ええ、そうでしょうそうでしょう。もちろん、私も目が点になりましたとも。 しかし、考えてみてほしいのです。この銀縁眼鏡くんの律儀さを。恩返しをするために、元々の主の姿を借りてお礼に来てくれる健気さを。 惑わされずに、きちんと礼を尽くすこと。その大切さを教えてくれるのです。嫌味なほど整った顔立ちで、時折しゅんとしながら。その罪深いほどの素直さを軽やかに綴った物語。 主人公の心情を適切にわかりやすく書き出している手腕はいつも驚かされます。 人と人との関わりや先入観に囚われがちな自身を振りかえる、まさに大人の絵本の頁をめくりませんか。
かこ
義理堅い眼鏡の、恩返し定番の提案。
タイトルそのまんまで、眼鏡が恩返しに来てくれるという話なんですけど、一言では説明しきれない面白さがありました。 助ける→恩返しの図式は古来からよくありますし、「あの時助けていただいた亀です」「ツルです」「タニシです」などの動物をはじめ、お地蔵さんも来てくれたりする中、物に魂が宿る思想の日本において「あの時助けていただいた眼鏡です」が存在してもおかしくはないでしょう。 恩返しに来てくれた眼鏡との絶妙なやり取りの中、眼鏡の持ち主とのかかわり合いや距離感の問題もストーリーに大きく絡むという、短編でありながらこの奥深さ。 一見コメディのようでありながら、人との関わりも描き出す深みのあるストーリーは一読の価値あり。タヌキに化かされたと思って読んでみて欲しいです。
MACK