ぽんこつパイロットが空に軌跡を残すまで――
最終更新:2023/11/11
作品紹介
《概要》 本作は急降下爆撃機に乗り込むことになった、新米パイロットを中心にした話を綴るものです。 未熟なまま実戦に投じられた主人公と、兵士達の奮闘を描いて参ります。 《内容概略》 ・1-1~1-5 【非戦闘パート】空の様子と共に、登場人物にスポットを当てます。 ・1-6~2~6 【戦闘パート】急降下爆撃による対地攻撃に入ります。 ・2-6~2-9 【戦闘パート】砲兵隊による間接照準射撃に入ります。 ・3章 【戦闘パート】主人公が対地攻撃を行います。 (縦読み推奨です。※横読みでも問題ありません)
評価・レビュー
美しい空と猛々しい戦場。圧巻の描写で描かれるのは新人少女パイロットの奮闘。
第一話を読むと、タイトルどおりに青と白の世界が目の前に広がるような錯覚を覚える筆力と、生き生きとした等身大の登場人物たちに驚かされます。 どこまでも美しい言葉が綾なすのは、本来ならばパイロットだけが許された白い波濤と紺碧の世界。そこに浸れると言う贅沢。 その中を一条の飛行機雲を曳きながら主人公機が翔けていく。主人公は、戦場には不釣り合いな愛らしいお嬢さん。ベテランでも、エースでもない新米パイロットが編隊に一生懸命ついて行こうとする奮闘は、まだ幼い渡り鳥のようでとても愛らしい。 そんな主人公を支える、不器用ながらも一生懸命な小隊長、頼り甲斐のある元教官、豪快ながらも優しさを秘めた大隊長。そしてまだ見ぬ部隊員たち。日常に居てもおかしくない人間味溢れる彼らが飛び込むのは、非日常の極致である戦場と言う世界。そこで繰り広げられるドラマから目が離せない。 冬の訪れに身を震わせる地上から曇天を見上げ、雲の切れ目から主人公機が見えたなら、思わず手を振って応援したくなる。そんな作品です。
円宮 模人
■青の中、□白の上。ぽんこつ構われ赴く先は。
青の中、白の上。 天気晴朗、空を飛ぶ。 ただし彼女は悪戦苦闘。 真っ直ぐ飛ばない(泣)。 はらへった(泣)。 皆さん何をなさって……あ――っ(焦)!! 編隊随一、ひよっこ飛行士。 皆に構われ見守られ。 心温め温められて。 赴く先は――初陣の空。 ゆえに。 この門をくぐる者、 この色を眼に刻む者、 一切の希望を捨てよ。 一切の楽観を棄てよ。 耳に轟、肌に震、心に怯、眼には獄。 青の下、白の底。黒の漂うその狭間。 血の赤、火の赤、業の赤。 弾け、抉って還す先。 還りたくば心にすがれ。 帰りたくば眼を開け。 ここは血と火と業の池。 眼を逸らし、眼を閉じて、逃げた者から囚わるる。 ここは地獄。赤の底。 視ずして帰る、ことは叶わじ。 ■ぽんこつパイロットが、空に軌跡を残すまで―― 塵と還りたくば心にすがれ。 生きて帰りたくば眼を開け。
中村尚裕