顕世界(けんせかい)デュープリケイション
最終更新:2022/8/15
作品紹介
志道恒美(しどうつねみ)、中学二年生、遍在(へんざい)の十四歳。 そんな彼女の運命は、猫の外見をとる異世界の種族との邂逅を果たした日を境に急転を余儀なくされた。 彼を始めとする異形の面々「西風(アンドヴァリ)」は、さる母体からこの世界に派遣された医療チームを自称した。そしてその目的は、彼らの保有する量子コンピューター、「エイル」を用いた精神の具現化による次代の療法を、後進地域の人々に施すことだという。 それは患者となるべき人間の無意識をサイバースペース上に電子的に再現した世界、「深域(インナーサークル)」に、実務を担う「術者(エイダー)」の意識を潜入させ、その感覚で以って精神的な病因を物理的に究明するというものだった。しかるにこの世界の人々の想像力が存外手に余り、そこで現地の人間を以って充当する方策が採られたとの由。そうして彼らの、いわばスカウトを恒美は受けたのだった。そのまま彼女は術者に任命され、超技術による医療に携わる仕儀となった。 無意識とはいえ患者には侵入を阻もうとする本能があり、それも同じく具現化され、しかも患者の嗜好を反映するのが常だった。だから治療のためにはそれを充分に学習し、且つ干戈を交える必要があった。 患者が変われば当然嗜好も異なり、それはバトル漫画であり、ロボットアニメであり、格闘ゲームであったりした。知識だけならエイルによって補い得るが、実践のための技能となればそうはいかない。そこで恒美の戦いは、精神も肉体も総動員した、いわば人間力を用いた戦いとならざるを得ないのだった。
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