マリオネットインテグレーター2
最終更新:2021/7/2
作品紹介
精霊国と呼ばれたラザフォード国から、精霊が消える日が近づく中、変遷する社会の中で、少年騎士は新たな出会いを果たす。 居候している魔導士の家に婚約者として表れた少女は、”愛を求める野良猫”だった。我を抑えるように厳しくしつけられた少年は、彼女と触れ合う事で、年相応の感情表現を身に着けて行くが……。 様々な思惑が錯綜する中、近隣諸国との関係も変化し、激動の時代の始まりにあって、青い瞳の少年騎士が大人に向かって成長する、その冒険の記録。 【参考文章量】本編のみ約11万文字、全30話、各話3000~4500文字。 超過する分は番外編の文字数です。 この作品は、以下の小説の続編後日談となります。 マリオネットインテグレーター https://kakuyomu.jp/works/1177354055651167264 *「美少年を愛でる趣味」の人が出て来るため、BがLする系のシーンが発生しています。タイトルに*のある部分、ご注意ください。 *タイトルに☆がついている番外編は、他作者様が書いてくれた二次創作となります。 (C)Copyrights 2021/04/29 MACK All Rights Reserved
評価・レビュー
「いと」に絡め取られる人々と、解くために前を向く人々と。
国を守ってきたはずの水晶木にその運命に翻弄される人々の様子を、どこか淡々とした筆致で描かれていた「マリオネットインテグレーター」の続編。 今作は前作で明らかにされなかったカートの秘密や、ピアの過去が明らかになるとともに、彼らが負う苛酷な運命との対峙が描かれていきます。新たに登場したフィーネ、成長したアーノルドなどが、さらにカートやピアと深く関わることで、前作よりももっと人と人とが関わることで生まれる心の軋み、切なさがとても鮮やかに胸に迫ります。 何と言っても、銀縁眼鏡白衣——! もとい、ダグラスが抱える野望と、何とも複雑な想い。彼の行為は決して許されるものではありませんが、それでも彼もまた世間の「常識」や固定観念にある意味縛られてしまっていたが故に、あんな運命に落ち込んでしまったのかなあとも思えました。 人が本当の意味で自由に生きるとはどういうことなのか、多様性とは、そんなことを考える良いきっかけともなります。 そして何より、辛いことを乗り越えた彼らの最後は大団円のハッピーエンドでした!
橘 紀里
新たなる”いと”をめぐる話
前回のテーマを踏襲しつつも、親などの身近な存在からの”いと”も丁寧に描かれた作品。 前作のメンバーがより一層魅力的に深く、また新たな登場人物が出て来ます。 精霊の声が聞こえていないことが隣国に知られ、新たな危機を迎えますが……。 陰謀渦巻く世界で、どうするか。 主人公のカートくんが愛らしく、応援したくなる作品です。
lachs ヤケザケ
紆余曲折な現代の道のりに勇気を与えてくれる本作。
最後まで読み終わりました。 このお話は前作『マリオネットインテグレーター』の続編となっています。 引き続き主役カートの成長物語となっていますが、その周囲に存在する魅力的な登場人物の成長物語にもなっています。 前作もそうでしたが、最初の登場は皮肉たっぷりだったのに、どんどんと魅力が溢れ、好きになっていく人物が数多くいるのもこの物語の魅力の一つです。 中でも私の推しは『アーノルド』。 読めば必ず彼の魅力にハマる方多数!だと思います。 そして前作に引き続き、テーマ性の強い本作。 読めば必ず自分自身と重ねてしまう点も多くあり、うるっとしてしまう場面も非常に多く、身の回りで絡み合う『いと』を思わず意識してしまいます。 果たして自分はこの『いと』に気が付き過ごしているのか、断ち切ることは出来ているのか。 もしくは絡み合うことを望み、生きていくのか。 どの選択も自分次第。 前に進もうとする時に、そこに気付きを与えてくれ、勇気を与えくれ、背中を押してくれる本作。 紆余曲折な道のりを必死に足掻いて歩こうとする全ての現代人に読んでもらいたい素晴らしい物語です。
凛々サイ
糸を断ち切ったその先にあるものは
前作「マリオネットインテグレーター」の続編となる本作。 前作同様、糸に絡まるというのはどういうことなのか?糸を断ち切って行動するというのはどういうことなのか?というテーマを読者に投げ掛けており、こちらは前作のテーマをより深掘りした内容になっています。 主人公であるカートはピアと二人で暮らしていましたが、ある日ピアの婚約者と名乗るピアの実妹、フィーネがやってくることで物語は動き始めます。 彼女は「ピアと結婚することが幸せになることだ」という母親の呪縛の糸に絡めとられており、最初からカートとぶつかりあってしまいます。 糸に絡めとられていたのはフィーネだけではありません。 両親の事情や育ての親のしつけによりうまく自己表現ができないカート、そして二人の保護者であるピアまでも、母親の糸に苦しめられていました。 彼らは時にはぶつかり合い、慰め合い、お互いにお互いの存在を受け入れながら少しずつ絡まった糸をほどいていきます。 また、精霊の言いなりになっていたラザフォード国自体も、精霊の呪縛から逃れ、挙兵という大きな決断を下していきます。 テーマは前回同様「運命の糸を断ち切る」こと。前作はこの糸を断ち切る所までで終わっておりましたが、本作ではさらに「断ち切ったその後、自らの意思で決断し行動する」所まで描かれています。 前作からの伏線もうまく張り巡らされており、回収の鮮やかさも見事ですので、前作を読み込んでいる人程、楽しめるのではないかと。 新キャラクターも登場し、読み応えは十分。二作品を通してつづられた、大団円の結末をぜひその目で見届けてください。
結月 花