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作:井上啓二

鎧と女将

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最終更新:2021/1/21

作品紹介

舞台となるのは、中世風の異世界にあるポートホープという名の港町。 メロディ・スプリングウィンド16歳は、そのポートホープにある『春の微風亭』という宿屋の若女将だ。 ある日、『春の微風亭』に一人の小さなお客が訪れる。 ティアリンク・ポーケントッター6歳は、兵役を終えた父親とこの宿屋で待ち合わせをしているのだという。 怯えた野兎のような表情を見せるティアに同情し、メロディは色々と世話を焼く。 これはとある異世界の宿屋、その若女将の奮闘記。

ファンタジーロボット異世界ファンタジー異種族間恋愛

評価・レビュー

宿屋の女将は、素敵な鎧に恋をする。読者は、女将と幼子に恋をする。

 映画のようだという感想を、久々にこの作品で持ちました。  ほのぼのとした導入から、クライマックスの盛り上がりまで、読み始めると止まらない見事な構成と確かな文章力、人物相関の妙。読後はまさに、映画を見終わった後の感覚。スタッフロールまで噛み締めてしまうやつです。  この作品の一番の魅力は登場人物たち。宿屋の女将メロディは16歳の少女だけど、明るい性格と元気の良さを持ち、思いやりの心と懐の深さ。年頃の女の子らしい感情がありつつも、前向きでエゴではない正義感の持ち主。自分の考えの良くない部分に気付いた時は、それにきちんと向き合って、変わっていこうとする強さも。  6歳の幼女ティアは、とにかく健気でいじらしい。仕草のひとつひとつが、本当に可愛い。  読み進めるうち、この二人の事を大好きになってしまいます。  数々の出来事に彼女達は笑い、喜び、悲しみ、そして苦しむ。その感情のふり幅を、読者も一緒に味わう事になるという。普遍的なエピソードも、そう来るか!という捻りがあり、キャラの魅力を深めます。ほのぼのとしたお話の中に散りばめられる、人間の利己主義な部分、戦争のこと、身分差、貧しさ。社会の問題が、ちくりちくりと心を刺してきて、読後に心に残る要素が多いです。  ファンタジーなのに、熱いロボバトルまで繰り広げられるので、そちらの方面がお好きな方もぜひ、一読をおすすめしたいです。    一章は一気読みするといいかもしれません…!

5.0

MACK