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作:飛鳥休暇

魔王の棲家~天才魔術師と老いた英雄達の物語~

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最終更新:2020/5/4

作品紹介

退魔戦力部隊【トライアド】に所属する自称・天才魔術師セイルは、ある日総司令より【魔王の棲家】へ向かえとの指令を受ける。退屈な任務にうんざりしていたセイルは、ようやく自身の力が発揮出来ると喜び勇んでその場所へ向かった。 だがしかし、【魔王の棲家】と呼ばれるその場所は、年老いた英雄達の介護施設だった―― 常識外れの入居者達に振り回されながら、セイルの心に何が生まれるのか。 小さな波紋が、やがて施設を揺るがす大事件に発展する。 危機的状況に直面し、かつての英雄達が立ち上がる! 伝説と言われる彼らの真の実力とは!? 第25回電撃大賞三次落ち作品

ファンタジー男主人公異世界魔法家族ノーハーレムノーチート師匠キャラ電撃大賞二次通過作品電撃大賞三次落ち高齢者萌え

評価・レビュー

譲る命に想いを託し、老傑たちよ集え! 未来の光を絶やさぬために。

 天才を自負する魔術師の青年が派遣された【魔王の棲家】。  どれほどの強敵が待ち構えているのかと心躍らせる彼だったが、そこで待ち受けていたのは、老いた英雄たちを介護し暴走を食い止めるという、予想外の毎日でした。  冒頭から始まる主人公セイルの苦悩は、高齢化が進む社会ではありふれたものかもしれません。才能に恵まれ、未来を夢見る若者が、意思疎通も困難な(しかし能力は魔王級な)年配者たちに振り回される様は、ままならない現実を想起させます。  しかしどんな境遇に置かれたとしても、心のありようで状況は変わってくる……ということを、セイルは少しずつ知っていくのです。  今は年老いて、何もかも「わからなく」なっているとしても。  過去の栄光を忘れられず、頑なになってしまっているとしても。  家族と過ごすことをあきらめ、閉ざされた施設を終の家として受け入れているとしても。  彼らはやはり、英傑たちなのでした。  小さな事件が波紋のように、大きな事件へとつながってゆく。丁寧に編まれた伏線を回収しながら盛り上がるクライマックスは、序盤の物悲しさを忘れさせてくれるほど躍動的です。  そして、往年のファンタジー好きなら判るであろう「格好いい演出」が至る所に織り込まれているのも、熱い。  全体で7万文字ちょっとという、サラッと読み切れる長さの長編です。読み終えたあとにはきっと、胸が温かくなる感動が待っていることでしょう。  ファンタジーにあまり触れたことがない方も、往年のファンタジーにどっぷり浸かって育った方も、楽しめる作品です。ぜひお読みください。

5.0

眞城白歌