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@オノログ
作:PAULA0125
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最終更新:2019/12/14
人類史上に燦々と輝ける「裏切り者」。その名はイスカリオテのユダ。 その真意と神の救いを書いた、聖書文学の先駆け、その伝説の処女作。
流麗な文章で読みやすく、とても素晴らしかったです。 太宰治の「駆け込み訴へ」を高解像度にしたような感じを受けつつ、「駈込み訴え」では得られなかった満足を感じています。 (もちろん、描かれるユダ像というのは違うわけで、それの好みというのもあるかもしれませんが) おそらくですが、太宰の「駆け込み訴へ」は、ユダを視点にしながらあくまで人間の情を描いているのに対し、この「カリオテの男」は、ユダの情を表現しつつ、「それらを回収していく、壮大な歴史と神のわざ」を思わせるという点が違うのだと思います。そして、それが私にとっては非常に好ましいのだと。 太宰の「駆け込み訴へ」は、太宰が当時寄せていた政治運動への想いを重ねて描いている…と言う批評を読んだことがあった気がします。だとしたらやはり太宰の「駆け込み訴へ」の読み方は、これをもってして聖書や周辺の歴史を再解釈する、といった営みのための文学ではないのだろうな…と思います。 多くの文学は「それが書かれた時代背景を学ぶ」ために(も)読まれると認識していますが、「駆け込み訴へ」もそういった読み方をするか、あるいは、多くの二次創作の如く人物の感情にフォーカスして抽出して楽しむ、といった読み方をするか(←というか、文学史的に考えると、これは「告白」という文学形式を太宰がやってみたかったから書いた作品なのではないか?と仮説を持っていますが、浅学の思いつきを出ません…) という感じなのに対して、「カリオテの男」は、人物の感情を楽しむこともできるし、「聖書」という大きな存在感の書物への理解促進にもつながるので…なんというか、現代の日本というこのタイミングにおいて「駆け込み訴へ」よりも文学的価値が高いのでは…………???とすら思えます。 とにかく、「カリオテの男」は、文学作品的にも優れているし、二次創作としても質が高くて、とてもすばらしかったと思います。(原作の情報が十分に踏まえられていて、「伝統をどこまで伸ばせるか」と挑戦的であるような、かつ原作では描かれなかった部分にリアリティをもって踏み込んでいる、という方向性が好きなのです) 聖書やキリスト教についての前知識がどれくらいないと読むのがつらいのか…についてはわかりかねるのですが、解説編も用意してくださっているので(→https://kakuyomu.jp/works/1177354054892650173) これを読みながら進めるとイケるんじゃないかと思いました。
藤原えりこ
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