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作:坂水

桜の咲く頃、梅は散る

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未評価

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最終更新:2018/3/24

作品紹介

中学二年の年度末、幼馴染が親友に告白した。二人は付き合い始め、仲を深めてゆく。 けれど、僕は知っていた。桜より早く咲き、春を告げる清純な花の実には、毒があることを。 (一万字強、短編)

恋愛中学生初恋少年少女純不純文学

評価・レビュー

毒を紡いだ静謐な文章

 青い梅の果肉に孕んだ毒を紡いだ静謐な文章のにおいに誘われて気付けば読み終えていました。無垢な罪も、残酷さも、善悪も、きれぎれな心も。人間の感情、という些細なものなど慮ることなく、世界は、季節は淡々と流れていきます。それらは別に人間の感情の都合で動かないものなのに、ひとは勝手に世界を都合よく解釈して、過ぎ去った時を、あの頃は良かった、という空虚な言葉に当て嵌めます。  本作には、そんな甘い逃げを許さない犯した罪の葛藤が描かれているように思いました。呼び方ひとつさえも繋がれた枷となるそれに揺さぶられる感情は、愛への呪詛にしか感じられぬひたむきな愛を、絶望の果てにしか見えぬ希望を抱いた時に似ているのかもしれません。読むのが下手な私は多分どこかを読み違えているような気もして、レビューを書くのにためらいもあったのですが、ただひとつだけ確かなことがあって、私はこの作品が好きです。

5.0

サトウ・レン

幼く仄暗い性

特別いい作品を読むと世界が明るくなったような気がします。 いえ、私も書き手なので嫉妬なり焦りなりは抱えるべきはずのところ、なんだか救われたような気がして。この世界は広くて、こんなに素晴らしい作品があって、だから君はおよそその点において絶望しなくてもいいし、これから往く先君は孤独ではない、と。こんな感慨を持つのは甚だ傲慢ではあるのですが、そう言ってもらえたような気がするのです。 ではこの作品がどう素晴らしいのか、それを語るのはやはり難しくあります。圧倒的な小説の巧さでしょうか、散りばめられていく小さな違和感とその全てを回収する手腕でしょうか、思春期の些か若過ぎる男女の性を生々しさとどうしようもなく匂い立ついい意味での”いやらしさ”をもって描いていることでしょうか、物語の語り手たる主人公が後々まで重要なことを語らぬことによって謎を残しつつ彼の持つ罪悪感を描写していることでしょうか、波留の恐ろしいまでの感情が迫って来るあの圧巻のラストでしょうか、そうして物語を読んだ人間があまりに早く咲く梅を見た時のように、美しいとは思いつつ密かにそして確かに心に不安なものを持たされてしまうことでしょうか。 私はこうして羅列して語れた気にはならないのです。私の好きな作家さんの言うことには、「ある小説を本当に語るためには同じだけの文字数を費やすか、小説を一本書くしかない」ということらしいのですが、果たして私は11,081文字費やしたとしてこの作品を語り得るのでしょうか。恐らく答は「否」であろうと思います。そのことに呆然としつつ、そこまでの作品に出会えたことに得難い幸福感を覚えます。 どうぞ皆さんも読んでくださいと、そう白旗を上げる文言を残して締めといたします。

5.0

辰井圭斗