水曜日。宇宙の渚で待ってるよ
最終更新:2022/4/3
作品紹介
廃部が決まった天文部のひとりぼっち部員・澪は、顧問教師の羽合にひそかに想いを寄せていたが、なかなか想いを伝えられずにいた。彼は、5年前に亡くなった姉・綾の恋人だったからだ。それでも、活動日の水曜日になると2人は天文ドームに来ては他愛もない話をして過ごしていた。 ある日、届くはずのない亡姉からのメールが届いたのをきっかけに、彼女が6年前に飛ばした高高度気球が見つかる。卒業式の最後に風船を飛ばすセレモニーで1番高く風船が上がった生徒の願いが叶うというジンクスがあり、綾は何かを願って気球を飛ばしたようだった。記録では気球は高度10キロに到達、文句なしに「1番高く」飛んだ風船だった。 澪は羽合の中に見え隠れする姉の存在が気になって仕方ない。夏休みの合宿も夜間観測も2人で過ごす時間は楽しい半面、綾のことを思い出してしまい、2人でしんみりする場面も。澪は羽合に想いを打ち明けられずモヤモヤと過ごすことになる。羽合も澪の気持ちには気づいているが、綾への後ろめたさと教師であることの自制心から、決して一線を越えようとはしない。それがなおさら澪をモヤモヤさせる。 天文部の廃部確定で落ち込んでいた澪だったが、姉が目指した「宇宙の渚」の話に勇気づけられ、最後の文化祭を星空見学会やらプラネタリウムで盛り上げることを思いつく。羽合も「いっちょやるか」と二つ返事で乗ってきて、2人の大作戦が始まる。陽菜・大地・澪の三角関係も勃発し、澪の青春が忙しくなってくる。 そうして澪は姉の高校時代と自分とを照らし、少しずつ自身のことにも興味を持つようになる。やがて友人や羽合の力も借りて文化祭を成功させる頃には、澪は姉への遠慮をやめ、自分の欲求を表に出せるようになる。 そして澪は、卒業式で高高度気球を打ち上げ、姉の叶えられなかった「宇宙の渚」の写真撮影に挑むことを決意する。
評価・レビュー
全員の思いが繋がった。水曜日。宇宙の渚で。
良い作品には、共通してとある特徴が存在しています。 この作品を読み始めてすぐ感じたのは、それらが複数揃っているというものでした。 主人公にして、ぼっち天文部員の澪。 澪の親友にして、大地に思いを寄せている陽菜。 彼女らの友人にして、理科部部長の少年、大地。 そして、天文部の顧問にして、澪が思いを寄せている相手、羽合。 しかし、羽合の元恋人は、白血病で亡くなった澪の姉、綾だったのです。姉の面影が、二人の間に横たわる障害となって、たびたび澪を苦しめます。 姉の亡霊を断ち切るためか、姉の意志を継ぐためか。卒業式に気球を打ち上げることを澪は決意するのですが――? ・早々に整う舞台。 ・序盤で提示される物語の着地点(気球の打ち上げ) このように、「良い作品に存在している特徴」をふたつ(いえ、それ以上?)持っている本作は、期待に違わぬ完成度でした。 複雑に絡み合い、すれ違う恋愛模様も魅力のひとつですが、本当の見せ場は中盤以降にやってくるどんでん返しでしょうか。伏線の全てが繋がって、ひとつの真実へと収束していく様と、周到なミスリードにやられて思わず驚嘆してしまいました。 六年前。同校の卒業生であった姉は、何を思い気球を打ち上げたのか。真実を知った澪は駆け出します。 目指す先は、宇宙の渚。 空と宇宙が交じり合うその場所に気球が到達したとき、どんな光景が見えるのでしょう? みんなの優しさが詰まった感動のフィナーレは、ぜひあなたの目で確かめてください。 「宇宙の渚で、待ってるよ」
木立花音(こだちかのん)
例えるならば、みたらし団子な味わい!
実に甘じょっぱく、ほどよい塩分に涙を禁じ得ない。 禁止されるほど、禁断の愛は止まらない.. 更には、ほろ苦い場面も さぁ、興味のある人は読もう!
雑食ベアー