閃光は暁に刺す
最終更新:2021/2/12
作品紹介
花火師の息子、小川暁。 冬のある日、彼の前には季節外れの浴衣を身につけた旭少女が現れる。 花火を求める旭少女と夏の遊びに興じる暁青年。 二人は線香花火の炎を見ながら、語る。
評価・レビュー
異文化、異世界とは何か
こちらのレビューを読ませて頂き、入りました。 途中までは日本の文化や異文化として触れていくのですが、タイムパラドックスと共に彼の秘密が明かされる。 その調和、融合の絡まり方に感嘆しました。物語もどこか…切ない、では片付かない。 これから彼は一体どんな未来を歩むのだろうかというところで、パン、と終わる。日常の一幕を切り取っただけのお話に、良い意味で読者が置いていかれる余韻がありました。この余韻はきっと、「続きが読みたい!」と押し付けられていない作品で、読者とは…そうだ、見送るものなんだよな、なんて考えたり致しました。世界は狭いのか?いや、広いものだから。 良作、ありがとう。
詩木燕二
少女との出会いが、青年にもたらしたものは何か? 花火が繋いだ、一冬の物語
「花火、売ってもらえますか」 冬に浴衣という季節外れのいでだちで現れた少女、旭は、花火師の父を持つ主人公暁青年に、おずおずとそう告げた。 * そんな二人の交流を描いたヒューマンドラマです。 恋と呼ぶほど大袈裟ではなく、けれど、少女のお願いや、「一緒に花火をしませんか?」という誘いを無下に断ることはできないほどには、少女は不思議と魅力的で。 材料を集めて線香花火を作り、駄菓子や玩具を買い求めて少女と戯れる。 冬なのに、夏の空気感すら感じられる情景描写と、段階的に移り変わっていく暁青年の心情が、丁寧な筆致で綴られるのが、なんといっても本作の魅力でしょうか? なぜ、少女は青年の前に現れたのか? 少女との出会いにより、彼を取り巻く環境がどう変化したのか? 僅か六千文字とは思えぬ濃厚な世界観と、ちょっと切ないボーイミーツガールの甘酸っぱさに、触れてみませんか?
木立花音(こだちかのん)