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作:辰井圭斗

君を死なせないための一千字

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最終更新:2022/3/13

作品紹介

ウェブ作家牧伸太郎は現代ドラマを書いたウェブ小説の中で主人公黒崎啓一を自殺させた。その小説の完結後、牧伸太郎の家を一人の人物が訪ねる。それは小説のキャラクターであるはずの黒崎啓一であった。すぐに親しくなる牧と黒崎。しかし、牧は黒崎が小説通りの行動をしていることに気が付く。このままでは彼が自殺する。牧は慌てて小説を書き直そうとするのだが――?

男主人公現代青春・ヒューマンドラマ自殺作家メタ

評価・レビュー

絶唱

 感情を込め、夢中になって歌うことを、絶唱、と言います。もちろん私は作者ではないので、作者の実際の感情を、本心を、知ることはできないわけですが、この作品を読むたびに、絶唱するように言葉を紡ぐ作者の姿は明瞭になっていきます。作者の本心は知りません。ただ私がそう感じただけの話なのですが、すくなくとも強烈な感情を見出してしまった私には、この作品は時に劇薬にもなります。  読むたび、と書きましたが作者とは別のサイトで知り合った私(※これはカクヨムに寄せたレビューです)は、三つのサイトにおいてこの作品に触れる機会があり、多分通読で五回は読んでいると思います。これは別に回数を誇りたいわけではなく、一回でも私よりも丁寧に読み解いてしまえるひとは多いでしょう。数はどうでもよくて、私にとって大事なのは、この作品を読むごとに変化する私の作品に対する感情で、読むのを繰り返すごとに、この作品に言葉を費やすことへのためらいが生まれるのです。私にとってこの作品はどこまでも愛おしい、でもこの作品への愛を語れば語るほど、私の拙い愛情表現によって色褪せていくのではないか、という恐怖にも似た、そんなためらいです。  それでもやっぱりこの作品は素晴らしい、ということでレビューを書こう、と。  塾講師のバイトのかたわらウェブ小説を牧伸太郎というペンネームで書いている〈俺〉の自宅に、その〈牧伸太郎〉の名を口にする青年が訪れる。出版社の人間が来たのかもしれない、と一瞬の甘い希望も打ち砕かれ、そしてその人物が黒崎啓一であることを知る。黒崎啓一は〈俺〉の創った半自伝的小説に登場する〈俺〉の生き写しであり、美化された〈きれいな〉面も持ち合わせていた……。そんなメタフィクション的な要素を取り入れた本作には、生き写しであるからこその、強い共感と、そんな相手にだからこそ抱く葛藤があります。鏡と対話するように本音をさらけ出せる相手の存在って、ちょっとした憧れかもしれません。  もちろんネタバレはできないので細かくは書きませんが、前編の終盤以降、〈俺〉は、人間の死生、救い、そして作家の業と対峙していき、その中で自分なりの答えを出し、物語は決して読者にその答えの〈正しさ〉を強いようとはせず、私なんかはそんなところにすごく魅力を感じてしまいます。  この物語は〈なぜ人は生きるのか〉という問いへの安易な解答の空虚さを知っているし、生や救いへの違和感にもがいている。だからその絶唱の果てに待つ余韻が、刺さる、のかもしれない。好きだな……、本当に。

5.0

サトウ・レン