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作:和田島イサキ

アリス・イン・ザ・金閣炎上

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未評価

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最終更新:2020/7/13

作品紹介

 小中高と山奥の女子校に育った世間知らずの彼女は、都会の大学に進んで天使に出会う。 【テーマ】擬態 【ジャンル】ほのぼの百合 【登場人物】殺人ブルドーザー女、ゴリラ 〈第二回こむら川小説大賞 参加作品〉 ※銀賞受賞 https://kakuyomu.jp/user_events/1177354054900482535

青春ガールズラブ現代コメディ百合短編純文学万人向け第二回こむら川小説大賞

評価・レビュー

酔っていません。酒には。

〈特にすることもなく取り残された夕暮れの和室、安心しきった寝顔を間近に眇める私の、その胸の裡に湧き上がる未知の情動。この汚れひとつない無邪気の塊を、簡単にその身を預けてしまえる雛鳥の無垢を、でも特段の理由なく滅茶苦茶に穢してしまいたくなる、このどこまでも粗野で根源的な人間の本能。〉  小説は言葉でできている。何当たり前のことを、という向きもあるかもしれませんが、そんな当たり前になり過ぎてついつい忘れてしまうことを思い出させてくれる作品があります。例えばそうですねぇ、と例として挙げたくなる作品がひとつ増えました。「アリス・イン・ザ・金閣炎上」です。いつも大体レビューの時は簡単な導入かあらすじらしき何かをちょっと偉そうに書いてみたりしているのですが、これには書きません、というか書けませんなる気持ちも本心としてはあるのですが、実際の言葉に触れない「アリス・イン・ザ・金閣炎上」は、カレーライスのルー抜きみたいなものですよ。得てしてそういう作品と出会った時、語りたい人間と語りたくない人間がいて、さらにその中に、そういう作品を語るのが得意な人間と下手な人間がいる。私は、本当ならひっそりと宝物にしたくて語りたくない人間で、さらに言えば、語るのがとても下手な人間だ。ならなぜ語る場に立ったか、というと、まだ足りない、読まれている数が、と思ったからです。あと一千、一万と読まれているなら、そりゃ私だって黙る立場を選ぶさ。まだ足りない、もっともっと、と私の内なる声が叫んだわけです。  小説は言葉でできています。書いた人間が丁寧に紡ぎあげた言葉を、読む側が拾いあげながら、言葉のみを頼りにして、新たに世界が再構築されていく。読むひとのぶんだけ無数に広がっていく。そういう作品に出会うと、すくなくとも私は、あぁやっぱり小説、っていいなぁ、と嬉しくなります。成人、という言葉に引かれた一本の線、性、という言葉に引かれた一本の線。奔放にも見える言葉の包みの切れ間に、不安や恐怖、そういった繊細な心の揺らぎが見えて、とても素敵な魅力があります。そしてその部分が見えるからこそ、かわいいのです。ベリーキュート。  酔っていません。酒には。  酔いました。言葉には。

5.0

サトウ・レン

金閣寺も『金閣寺』も二度とまともな目では見られないが、すごい所はまた別

読後景勝としての金閣寺も作品としての『金閣寺』も二度とまともな目で見られなくなる本作ですが、驚くべきことに「そんな女の子いないよ」とも「そんなことしないよ」とも思わず。割と特殊な設定のキャラがあんなことするのに、全然両方あり得るよね、というか”有り得たかもしれない人生で身に覚えがある”と思わせられてしまうあたり、なんて力のある作品だろうと思います。 あとは言葉が悉くジャストフィットしている印象で舌を巻きます。古雅なものからくだけたものまで豊富な語彙がここぞという所で最適に使われ、かつ恐ろしく読みやすい。正直物語を楽しむ一方で、同じ書き手として背筋を凍らせる自分がいました。 女子校時代のたばこのエピソードがとても好きで、”秘密”を共有させるあたり、なんて美しいものを書くのだろうかと思います。こうして読後一ヵ月以上経ってからレビューを書いてしまったのはあの辺りのせいです。 娯楽性の高い百合エンタメでもあり、美しい小説でもあり、実は幅広い層におすすめです。

5.0

辰井圭斗

とんでもない筆力。

文章の密度に一瞬驚きますが、1万字が一瞬で終わります。 多重の引用。ウィット。情報の過不足のなさ。思春期の葛藤。ラストのカタルシス。 圧倒的理不尽をたたきつけられているはずなのにむしろ気持ちよく読まされます。 カクヨムの才能、とんでもない。 こういう人たちがこういう文章を書くだけでしっかりご飯を喰える環境を作っていかなくっちゃぁいけねーないけねーよ。

5.0

鈴木無花果

ウィットにとんだ文章で、思春期のリアルに引きずり込まれる

一人称の台詞回しが、文学的、且つ、エッジィなウィットに富んでいて、暴力的なまでに文章に引きずり込まれてしまいます。 語彙ひとつ、引用ひとつとっても、尖ったおかしさに溢れていて、それが矢継ぎ早にどんどん出てくるので、のめり込む以外に選択肢がありません。 ごく個人的な感覚ですが、ナウシカの引用はすごかったです……。 その、書き手の方の知識の広さ故のユーモアには、どんどん、どんどん「少女」と「女性あるいは男性」の途上にある語り手の内包する生々しいリアルが滲み出してきて、そこにある凄味に圧倒されます。 特に、序盤で何気なく語られた上京する以前のことが回収される場面では、強烈に感じ入るものがありました。 思春期の少女たちの世界は、生々しく、耽美的な危うさに充ちています。 そしてその中に縛り付けられるような閉塞感が、読み手側にまで感じられるくらいに身に迫る文章で描かれて、まったく自分とは違う語り手の焦燥が、けれど肌に感じられました。 そして、終盤の「炎上」のシーン。 笑いがこみあげてくると共に、そこには気持ちのいい解放感、カタルシスが溢れていて、まさに物語の終幕にふさわしいなと思えます。 突飛な行動にも関わらず、それを気持ちよく、楽しく、そしてリアルに感じてしまうのは、そこまでで語り手の内面にのめり込んでしまったが故でしょう。 ラストの一文まで気も利いています。 たいへん面白く、楽しく、同時に皮膚にジリジリとしたものを感じられて、読んで良かったと思える作品でした。

5.0

ぞーいー