偽称の虚言者 ー嘘を吐《は》く正直者ー
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【作品紹介】
『異能力事件専門捜査室』という秘匿機関の捜査官・泉小路小夜《いずみこうじさよ》は、ここ二年間で起きている不可解な事件に頭を悩ませていた。 発見されたのは二人の能力者の死体。しかし不気味なことに、どちらの現場も肝心の犯人に繋がる痕跡が一切見つからない。足跡も、毛髪の一本も、指紋すらも。何者かと「いた」はずなのに、その情報が何一つ、無い。 そこで小夜の仕事は、能力者収容施設にいる『情報屋』に会い、捜査協力をしてもらうこと。すぐに終わると思っていた矢先、目の前で堂々と脱走しようとする男、京谷要《きょうや かなめ》と遭遇する。小夜は放っておく訳にもいかず、ひとまずその男の用事に同行することに。 要はなんでも、「嘘つき」で有名らしく、自分の持つ能力は『嘘を信じ込ませること』だという。そして、「二人の能力者を“賭け”で殺したのは、この、嘘つきの自分だ」と口にする。 だが、要の言葉が嘘か本当なのかは、小夜には分からない。 果たして要は、本当にこの事件の犯人なのだろうか。「自分は嘘つきだ」という彼は、その通りの嘘つきなのか。それともその言葉は嘘で、最初から真実を語る正直者なのか――。