洋食屋に置き去りにされた過去を持つ西山匠海は、五歳になったかならぬかで母の手を離れ、児童養護施設で育った。父親は「殴る男」で、食事のときに音をたてると殴られた。食事の時間が怖くて仕方のなかった匠海だが、最後に母と食べた洋食屋のオムライスだけは色褪せぬ美しい記憶となる。 十八歳となり、施設を出た匠海は思い出にある洋食屋を探し回る。 自身の記憶と合致する店に行きつくが、そこは思い出の洋食屋ではなく、「小料理 絶(たえ)」となっていた。ここが小料理屋になる以前に洋食屋がなかったかを訊ねるべく、匠海は店に足を踏み入れる。
更新:2021/5/30
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