人は、いつの頃から恐怖という感情を抱え込むのだろうか。 この世に生まれ落ちたときには、既にその脳髄の奥深くに刻み込まれているのだろうか。 それとも、他者によって、あるいは自らの経験によって生み出され、育まれていくものなのだろうか。 その答えが今、目の前にある。 己が過ちによって閉じられた、蓋。 蓋によって閉じ込められた、恐怖。 開けてはならぬ。 開けてはならぬ。 幾度念じても、この手は勝手に蓋へとのびていく。 まるで、自分とは別の生き物のように。 まるで、操られているように。 蓋に封じられたものの恨みに誘われるように。 「わたしは、恐怖を欲している」 抗いきれぬ衝動は声ならぬ声となって、今夜も甘く囁きかけてくる。 ※夏のホラー2014参加作品 日常に潜む恐怖と、そこから身を守る術をテーマにお送りします
更新:2014/8/12
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