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タグ:女主人公/一人称

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作:間咲正樹

塩対応の結婚相手の本音らしきものを、従者さんがスケッチブックで暴露してきます

「リヒャルト様、このフリーダ、本日よりあなた様の妻として精一杯務めさせていただきます。何卒よろしくお願い申し上げます」 「……ああ」  桜の蕾が長い眠りから目覚めたばかりの、麗らかなある日。  広大なバラデュール侯爵家の一室にて、私は今日から夫となるリヒャルト様に、うやうやしくカーテシーを取った。  だが、リヒャルト様から返されたのは、「……ああ」という素っ気ない返事だけ。  絵画に描かれる魔王を彷彿とさせるような、冷たくも美しい瞳が私を刺す。  でも然程ショックはない。  何せ私はつい先月、婚約者に浮気された挙句、婚約を破棄された身なのだ。  理由はどうあれ傷物となった私と、新たに結婚してくれる人など現れるはずもない。  そんな中唯一打診をくれたのが、何とあの名門バラデュール侯爵家だったのである。  一人息子のリヒャルト様の妻に、私を欲しいとのこと――。  私の両親は大層喜び、二つ返事でこうして結婚の運びとなったのだった。  何故バラデュール侯爵閣下が、私なんかを大事な一人息子の妻にしたがったのかは見当もつかないけれど、当のリヒャルト様からしたら迷惑極まりなかったことだろう。  だからこそ、リヒャルト様のこの態度も当然よ。  傷物の自分をもらっていただいたことに感謝こそすれ、文句を言う権利は微塵もないわ……。  ……ん?  その時だった。  リヒャルト様の隣でずっと笑顔で佇んでいた従者さんらしき人が、どこからともなくスケッチブックを取り出し、物凄い早さでそこに何かを書き始めた。  い、いったい何を……?  従者さんはスケッチブックをリヒャルト様の後頭部辺りにそっと掲げた。  そこにはこんな文章が書かれていた――。 『ふわああああん!! 俺のバカバカバカ!! 何であんな素っ気ない返事しかできなかったんだよおお!!! ホントはフリーダのことが好きで好きで堪らないのに!!! 婚約破棄されたって知った時は、「ヨッシャアアアアア!!!!」ってガッツポーズして、速攻で父上に結婚の打診をするように土下座までしたのにッ!! でも、愛しのフリーダを目の前にしたら、緊張して上手く喋れねえよおおおお!!!』

更新:2022/11/25

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作:間咲正樹

婚約破棄されたから、婚約者に全力で罵声を浴びせてやった

「エレナ、大事な話があるッ!」  ――!  私の婚約者であるディンゼル第二王子が、夜会の最中に突如声を荒げた。  は? 大事な話? 「今この時をもって――僕は君との婚約を破棄するッ!!」  ――!!!  はああああああああ!?!?!?  婚約を破棄だああああ!?!?!? 「ど、どういうことですかディンゼル様……」 「まったく、愚かな行いをしているという自覚すらないとは、とんだ痴れ者だな君は!」  っ!?  ……なんだと? 「フレンダに対する数々の嫌がらせ、身に覚えがないとは言わせないぞ!」 「ディンゼル様、私が悪いのです。どうかエレナ様を責めないでくださいませ」  ――!  男爵令嬢であるフレンダが、ディンゼル様にしなだれかかりながら上目遣いを向けた。  こ、これは……! 「ああ、可哀想なフレンダ。エレナにそう言うように脅されているんだね? こんな心の優しいフレンダを陰でコソコソイジメているとは、吐き気を催す邪悪な行為と知れ、エレナ! 君は僕の婚約者には相応しくない! 修道院にでも行き、自らの愚行を生涯を賭けて反省するんだな!」  その瞬間、フレンダが私にだけ見える角度で、勝ち誇ったようなゲスい笑みを向けてきた。  ……なるほど、そういうことね。  泥棒猫のハニトラに、まんまとバカが引っ掛かったってわけだ。  …………そういうことなら、ね。 「――うるせええええええええええ!!!!!」 「「「――!?!?」」」  こっちも容赦しねーぞ。

更新:2021/5/17

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