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作:林来栖

冬の月の精霊と機織りの娘

草原の小さな村に住む少女エリュシカは、母の遺した機織り機でタペストリーなどの織物を織って暮らしていた。ある晩、毒沼の水にあたった老商人を助けたところ、商人はお礼にと、エリュシカのタペストリーを王都へ持って行って売ってくれた。その一枚が国王の目に止まり、嫁いできたばかりの王妃のためのタペストリーを織るように、とエリュシカに依頼が来る。その使者であった騎士テリングに、エリュシカは淡い恋心を抱いた。 しかし、国王からの依頼でも、王都に機織り機までは持っていけない。悩んだ末に依頼を断ったエリュシカを、商人――実は冬の月の精霊が、テリングと共に王妃の故国へと魔法で運ぶ。自分の住む草原の景色とはまた違った美しい山野を目にしたエリュシカは、王妃のためにタペストリーを織る決心をする。 冬の月の精霊は、そんなエリュシカを守るようにと、テリングに言った。 やがてタペストリーは出来上がり、エリュシカはテリングと共に国王と王妃に謁見する。王妃は織物の出来栄えに感激し、国王も、何なりと褒美を与えると約束する。 それまで機織りにしか興味のなかったエリュシカだったが、テリングと出会い、ひとつだけ叶えたい願いが出来た。それは、テリングの妻になることだった。だが、由緒正しい近衛騎士とただの村娘の自分とでは到底釣り合わない。 淡い願いは諦めようと、エリュシカは心に決めた。

更新:2014/1/12

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