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作:齋藤 一明

あわせ鏡

歯科医の遠山源太、銀行員の加藤 雅、看護師の前田琴音、そして地方公務員の松永勘太(おれ) この四人は、幼馴染であり、カップルなのだ。 俺たちは、短い夏の休暇を鹿児島県の甑島ですごしていた。 真っ赤に焼けたことをものともせず、一戦まじえてベッドで海を眺めていた俺と琴音は、肝を潰すような地震にみまわれた。 慌てて身支度を整えると、はるかな海原に一本の白線がうかび、ぐんぐん岸に近づいてくるのを為すすべなく眺めていた。 しかし、まさに津波が岸にうちつける寸前に、光景が逆転を始めた。 映像も音声も逆に回り始めたのだ。 排水口から湧き上がる水が、からだを伝ってシャワーヘッドに吸い込まれ、モグモグ動かす口から刺身をとりだしたかとおもうと、きれいに盛り付けを始める。海面に広がっていた波紋が一点に集まると同時にしぶきも集まってきて、そこから俺は岩の上に飛び上がった。それも足からだ。 船に乗れば、真っ白なウェーキを集めるように船はすごい速度で後退した。 そうやって過去へ、過去へと映像は遡っていき、琴音の声で我に帰った。 妙な夢をみていたようだ。 ところが、現実の生活が始まると、夢でみたことをなぞっている。 夢でみた出来事を一覧表にした俺と琴音は、現実が夢のとおりに進んでいることを知る。 残された時間は二ヶ月。一介の小市民である俺は、いったいどうすれば良いのだろうか。

更新:2015/3/5

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