この物語の舞台は、同族から贄を選び食べる生態を持つ食人鬼たちの国。
それを通して描かれるのは、人が人を喰らう社会への一つの視線である。
その社会を訪れた、主人公の文化人類学者の卵・イオが見るのは、
そうしないと生きられない種族の社会、文化、そして価値観だった。
人を、同族を喰らわねば生きていけない。
彼らはそれにどう折り合いをつけているのか。
そんな世界で、親友が贄に選ばれた少年『カズスムク』の葛藤を知り、
イオはその異文化を見て、想い、そこから自分たちのことを振り返る。
深く練り上げられた設定と描写から、そんな『異なった文化』の世界を垣間見るという
フィクションの醍醐味そのものをこの作品では存分に味わえるのだ。
それは苦くもあり、美味でもある。
登録:2021/7/20 18:01
更新:2021/7/23 17:15