ネット小説を読んで、いいな、好きだな、うまいな、と思うことはたくさんありますが、本気で読み終わった後に「ああ、もう終わってしまった」と寂しさを感じることは実はほとんどありません。
それは、私自身が長めの作品をあまり読まないからというのもあるので一概には言い切れないのですが、とにかくこの作品を読んだあとはそこまで感じました。
色々すごいなと思うところはあるのですが、キャラクターの描き方が作品全体に与える影響。
これがこのお話の中で、特に大きいのではないでしょうか。
ざっくりとしたキャラ設定自体は、見たことあるような印象でも、それをステレオタイプ化したり、単純化したりせず、きちんと一人一人を見つめて書いてらっしゃるように思えて、それがとても私は好きでした。
別に変わったことをしようとしなくても、しっかりキャラクターと向き合うことで彼らには個性が与えられるし、奥行きも出てきます。
また、そうやって様々なキャラクターを通して多角的な視点から物事を描いているため、ストーリーの言わんとすることが押しつけがましかったり説教臭かったりせず、読んでいるうちにすとんと内側になじんでくる感じでした。
ガリガリ自分の言いたいことを押しつけるのではない、一歩引いた描き方は、いち書き手としても、できるようになりたいなと思います。
設定、世界観の提示の仕方もお上手です。
とても緻密に構築されていて、けれど、それぞれのキャラクターを通して小出しにされていき、自然とどういう世界であるかが入ってきます。
個人的にはハーヴェイとリオのお兄さんが好きでした。
みんな良かったんですが、特に。
取り留めもない感想ですが、とにかく素晴らしい作品でした。
登録:2021/7/22 14:11
更新:2021/7/23 17:15