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@オノログ

語り部の声が聞こえてきそうな、幻想文学風ファンタジー

5.0
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深い悲しみに彩られたプロローグで語られるのは、孤独な火竜の物語。親友である司書王を遥か昔に喪った後も、彼の遺志を継いで図書館を守り続けています。

彼女の見る夢では、司書王はまだあどけない少年で、竜も少女の姿で一緒に旅をしています。切ない程に幸せな過去の夢。それがこの物語の大きな柱なのです。


後の司書王、ユカは、素直で明るくて人見知りしない少年です。天才的な物語師で、彼が物語を語れば、それが現実に影響を及ぼす、ある意味最強の魔法使いでもあります。


この世界のこの時代、魔法使いは、得体の知れない力を使うとして、邪悪な者とされていました。ユカは捨て子だったのですが、彼を育てたのは、そうやって迫害された魔法使いでした。ユカは母の為に、魔法使いへの偏見を無くそうと旅に出ます。物語の力で、真実を広めていこうと思ったのです。


旅の途中でユカが出会ったのが、親友となる火竜、リエッキ。普段は魔法の力で少女の姿をしています。照れ屋で素直じゃないけど、結構感情が分かり易い、勇ましくて可愛い女の子です。実に良いツンデレ。


魔法使いを迫害する筆頭にあるのが、知識と経験で人々を導く呪使いでしたが、彼らは既存の権力に結び付き、権威主義に染まっていました。

そんな呪使いの状況に憤りながら、呪使いの誇りを持ってユカを追うのが、最強のライバル「左利き」です。他人にも厳しいけど自分にも厳しい、ストイックでクールで、冷静な頭脳派。なのに、ユカとの対決では熱くなるの、最高じゃないですか。最高です。


「左利き」を補佐する「相棒」は、粗野で豪快で単純で明朗。素直で真っ直ぐな性格で、他人を冷笑しがちな左利きが、じわじわ絆されてしまうのも良いです。とても良い。


魅力的な登場人物達が、賑やかに動き回る、楽しくて幸せな物語。でも、これは遠い過去のもの。

しかし、孤独な火竜の元に思いもかけない出会いが舞い込みます。それは、少しずつ、リエッキの悲しみを癒していき……。物語は喪失から再生へと向かっていくのです。


驚く程に美しい文章で綴られる、伝説の竜が守る宝玉の様なファンタジー。


――説話を司る神の忘れられた御名において。

――偶数と奇数にかけて、天穹の星の無限にかけて。

akinokonika

登録:2021/7/23 16:32

更新:2021/7/23 17:15

こちらはakinokonikaさんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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