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月に焦がれ、風を想う。数奇なさだめに抗う二人の古代浪漫・幻想譚。

5.0
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 繊細な描写と緻密な調査が光る、古代日本を舞台とした歴史ファンタジー。邪馬台国という名は誰もが聞いたことあると思いますが、それが九州にあったという説をベースに、日本神話の神々の末裔である人物たちが描かれてゆきます。


 風読の力を持つ夕星は、彼女の能力を欲した者たちの襲撃により故郷と許婚を奪われてしまいます。許婚の青年が彼女の護りにと託してくれたのは、姿のない近衛・葉隠。途中、海を越え、悪漢に襲われ、道なき道を進み、辿り着いたのは日向大王の統べる大きな国でした。

 先見の力を持つ大王に迎え入れられた夕星は、そこに身を寄せることになりますが、やがて熊襲国との戦いに巻き込まれてゆくことに――。


 日本神話と史実、九州地方の風土特色などが巧みに織り込まれており、邪馬台国と熊襲国(人によっては狗奴国という名称に馴染みがあるかも?)の戦いや、神々の末裔が持つ不思議な能力が、オリジナリティ豊かに編みあげられています。

 軸になる夕星姫と葉隠の、多くの制約に縛られた関係性も、非常に胸を揺さぶるものとなっており、二人の想いの先を見届けたいと思わせられます。


 風読の姫に科せられた呪いとは何か、葉隠の「姿がない」とはどういうことなのか。

 ぜひとも本作を読んで、確かめてください。

眞城白歌

登録:2021/7/27 13:22

更新:2021/7/27 13:22

こちらは眞城白歌さんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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