【物語は】
ある工夫を凝らした一場面から始まっていく。この場面で語られる夜叉は、酒呑童子しゅてんどうじ。名前だけなら聞いたことがあるという人も多いと思われる。酒呑童子は、丹波国の大江山、または山城国京都と丹波国の国境にある大枝(老の坂)に住んでいたと伝わる鬼の頭領。(ウィキ調べ)
その後、プロローグに入りガラリと雰囲気が変わる。
ここは喫茶店だろうか? 食事の出来るある店に、ある男がやって来る。そこでこの土地のことが明かされていくのだが、何やらこの土地には秘密があるようで?
【登場人物たち】
この物語は、プロローグと本編では視点が違う。プロローグはプロローグに過ぎないという事だ。本編に入ると、あらすじに出てくる少女の視点となり、物語は進んでいく。
この主人公はあまり女の子という感じがしない。(イメージでの)とても落ち着いていて、自分をしっかりと思っている印象である。それは、ある美形の双子の転校生たちに、ほぼ反応を示さないという点からも、言えるのではないだろうか。つまりは、容姿できゃあきゃあ言うようなタイプの高校生ではないという事だ。
あまり詳細を書いてしまうとネタバレになってしまうが、この出会いは面白い展開となっていく。
【世界観・舞台・物語の魅力】
舞台は現代であり、妖と鬼もいる世界観。とても面白い世界観だと思う。
作者の手腕に驚かされる。ここもあまり詳しくは言えないが、想像通りに行かない。良い意味で予想を裏切る展開となるのだ。
次々と巻き起こる想定外の出来事に、読み手も驚きの連続である。あらすじにかなり詳しく書かれていると感じるが、巧いことぼかしてあるようにも思えた。
そして全体に構成がとても巧いと感じた。ちゃんと情報が提供されているにも関わらず、それらが繋がらないのだ。もしかしたら深く考える人は、伏線なり、糸を見つけてしまうのかも知れないが。
主人公がある戦いにて、ピンチになるところから少しづつ風向きは変わっていく。そこから明かされていく鬼や妖のこと。彼らの違いなど。そしてその中で、主人公の境遇なども詳しく分かって来るのである。かなり作り込まれた世界観だが、とても分かりやすい。いろんなことが繋がっていくと、必然性で作られた登場人物の構成に驚く。
【物語の見どころ】
繋がっていく過程がとても面白い作品。通常、世界観というのはそんなに面白い部分ではないはずだ。しかしこの物語は少し風変わりな印象を受ける。つまり、舞台や世界観が明かされていく過程に、とても面白味を感じる作品なのである。それは説明文や会話、心情などで分かって来るのだが、ミステリーの種明かしのような面白さがある。
”え?そうだったの⁈”の連続。そこに至るまでにモチーフやワードはあるのだが、なかなか繋がることはない。なので、見えているものが見えていないという、怪奇現象を起こす。
そんな中、段々と明かされていく真実。主人公は望まずして巻き込まれていくことになる。今後の展開がとても気になる物語だ。
あなたもお手に取られてみませんか?
主人公は果たして、この後どんな生き方を選ぶのか?物語は何処へ向かうのか?その目で、ぜひ確かめてみてくださいね。おススメです。
登録:2021/8/8 21:30
更新:2021/8/8 21:30