相貌失認――他人の顔が見えなくなってしまう病を患い、特に女性の顔を認識できない主人公、早坂翔。そんな彼の前に現れたのは、唯一顔を認識できる少女、水瀬茉莉。
小学校で初めて出会い、中学校で距離を縮めていく二人。しかし、茉莉に惹かれていく中で、翔は彼女に秘められた陰を知る。
読みやすい文章に導かれるまま読み進めて行くと、終盤で待ち受けている毒に、翔共々苦しめられることになるでしょう。読了後も残る毒は、切なくも不思議と明るく爽やかな余韻を味わわせてくれます。
残酷な暗部を孕んでいるからこそ、咲く花は美しく尊い。痛切な毒でより美しさの際立った物語に、ぜひ痺れてください。
登録:2021/8/14 10:13
更新:2021/8/14 10:12