ちょっと前に、アニオタ小説のレビューを書きましたが、その作者、かつたけいさんの作品です。
奇妙なタイトルに、なんじゃこりゃ、と思い、こちらも読んでみたら……引き込まれました。なんだかズルズルと。
アクが強すぎて、万人にはおすすめできないかな。ということで、辛口の評価3.5です。
まずは簡単なあらすじ。
主人公は、中学生の女の子、高塚香奈(たかつかかな)。
とっても明るくて元気な女の子。
ですが、引きこもりのお姉ちゃんと、仲が悪い。
悪いというか、お姉ちゃんが完全に心をとざしており、それをなんとか元気づけようとするのだけど、お姉ちゃんが大暴れして、ボコボコに殴られてしまって。それでも香奈は、自分のこの態度が、いつかお姉ちゃんを救うんだ。と、あくまで前向きに、元気に過ごす日々。
ある日、商店街で、不思議で不気味な老人たちを目撃する。
黒い上下に、顔が真っ白塗りの、パンクロックみたいな、老人たち。
正体は、実は香奈のよく知った、商店街の老人たちだった。
商店街活性化のため、目立つような珍しいことをやろう、ということで、結成した老人バンドだ。
なんとなく通ううちに香奈は、なんとなくバンドに加わることになってしまう。
親にギターも買ってもらい、老人たちとの楽しい日々。
家では姉に殴られるけど、めげず、くじけず。
作詞を任されることになったものの、なかなか良い詞がひらめかず。
でも楽しいバンド活動。家ではボコボコ殴られるけど。
そんなこんなしているうちに、香奈は、交通事故で死んでしまいます。
冒頭の冒頭で分かっていることではありますが、とにかく、物語は主役交代。
後半は、お姉ちゃんの復活物語です。
引きこもりになった理由、ある酷い目にあったことが原因なのですが、
実は、前半ではまったく語られていなかった、凄いことが分かります。
お姉ちゃんよりも、死んだ香奈の方が、実は遥かに、凄まじく酷い目にあっていたのです。自殺してもおかしくないほどの。
自分を責めるあまり、精神がぐちゃぐちゃになって、お姉ちゃんは引きこもりになってしまっていたのです。
なんとかその苦悩から立ち直り、妹のあとをついで老人バンドに入り、妹が書きかけていた歌詞を、自分が完成させる。
そしてついに、フェスの日が来る。
ずっと引き込もっていたお姉ちゃんに、まともに歌えるはずもなく、と、そこに小さな、奇跡が起きて……
と、こんな感じのお話です。
なんだろうな、この物語は。
とってもせつない。でも、それだけでもなくて。
楽しいほどに、悲しくて、
悲しいほどに、楽しくて。
笑いと泣きが、絶妙な感じに溶け合った、そして題材が老人バンドという、とっても奇妙な物語です。
ちなみにタイトルは、物語のストーリーとは関係ありません。
バンド老人の一人の、肉体特徴であり、ニックネームです。
メンバー全員の、ニックネームでの紹介シーンがあるんですが、これ、笑えます。不謹慎だけど笑えます。是非、読んでみて欲しいです。
以前、泣き映画ブームがありましたけど、そんな感じに泣きたい人に、おすすめなお話です。
登録:2021/9/19 18:12
更新:2021/9/19 18:22