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回り続ける呪いの永久機関

5.0
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観覧車に自縛しちゃった悪霊と、それを説教する死神、そしてそこに現れるひとりの女の子の物語。

不幸とか恨みとか悪意とか不条理とか、そういうのがぐるぐる煮詰まっていくようなお話です。

特筆すべきはキャラクター、というか、彼らの立場やものの見方の違いです。悪霊と、死神と、いろいろしんどい女の子。まさに三者三様といった趣で、それぞれの立場に感情移入したり、あるいは反証を考えてみたりと、読み進めながら脳内でごちゃごちゃやる感覚が楽しいです。

中でも一番惹きつけられたのは、やっぱり視点保持者であるところの悪霊さん。彼の物事の考え方、存在の希薄さをそのまま表したような、なんとも悪霊らしい地の文の描写が好きです。

何もかもが無価値、と断ずるわりに、人間の幸せに対して強い執着を見せる。観覧車に留まりながら訪問者をただ機械的に呪う、その完全にパターン化された行動様式。きっと外から見たなら希薄で曖昧な状態であろう、この悪霊という存在そのものを、でも地の文を通じて内部から活写してみせること。

この〝もしかしたら曖昧かもしれない自律意思〟を、でもしっかり言語化した状態で読まされる、という、この読書感覚がとても新鮮でした。いわゆる「信頼できない語り手」、とは少しニュアンスが違うのですけれど(大目的という面では全然違う)、でも構造的な面白みとしてはそれに似ている部分があると思います。

そして、この感覚をたっぷり味わった上での、終盤の展開。主人公の内面の、その小さな変遷が楽しい作品でした。

和田島イサキ

登録:2021/10/5 23:12

更新:2021/10/5 23:11

こちらは和田島イサキさんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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610 light-years Love

来世における巡り合いのお話(※語弊のある表現)

 約九十年の人生の締めくくり、間抜けな人生だと自嘲しながらも、でも満ち足りて往生するひとりの男性のお話。  しっとりと落ち着いた描写が胸に沁みる、切なくも優しい手触りの人間ドラマ、のようなSFです。ドSF。どうやってもネタバレになるというか、いやそもそもタグの時点で明かされてるも同然な部分なので〝そこ〟についてはもう気にせず触れてしまうのですが(困る人はいますぐ本編へ!)、シミュレーション仮説をモチーフにしたお話です。その辺りを端的かつ印象深く象徴しているのが、本作のキャッチである『あなたの愛する人は本当に実在するのでしょうか?』の一文。これ好きです。本編の内容を読み終えてからだと、より強く意味合いが強調されるような感覚(後述します)。  導入であるところの「九十年の人生」、それはすべて仮想現実だった、というところから始まる物語。宇宙船での星間航行中、どうしても持て余すことになる長い時間を潰すための、娯楽としての人生のシミュレーション。要は長い夢から覚めたようなもので、さっきまでの人生はすべて作り物でしかなかった、というのがこのお話の肝というか前提になるわけですけれど。  ここで面白いのがこの主人公、というか作中の人類全般のことなのですけれど、寿命が半永久的に続くんです。現生人類の人生一回分の時間くらいは、ほとんどあっという間の出来事。さすがに未来(千年後)の世界だけあって全然違うと、それ自体は特段なんてことはないのですけれど。  宇宙船のコンピュータによってシミュレートされた方の人生、それが千年前(作品外における現代)の世界であるということと、そして『シミュレーション仮説』というタグ。これらの意味するところというかなんというか、まあ要するにメタ的に見ることで作品の主軸とはまた別の妙味を上乗せしてくるという、この構造とそのさりげなさにニヤリとしました。あくまでも副次的に書かれている、そのお洒落というか上品な感じ。  さて、その上でその主軸、物語のメインとなるドラマなのですが。まんまとやられたというか綺麗に決まったというか、きっちり組まれた構造の綺麗さにうっとりします。単純にロマンティックないい話でもあるのですけれど、これ構造だけ見てちょっと見方を変えるなら、ある意味転生ものみたいなところもあるんですよね。いわゆる前世からの生まれ変わり、離れ離れになった運命の相手に再び巡り合うお話のような。王道であり古典でもあるその類型を、でもただSF的な設定の上に持ってきただけでなく、まったく違う手触りに変えてみせる。物語を自分の(作者自身の)ものにする、というのは、たぶんこういうことなのかなと思いました。  あと大好きなところ、というか絶対触れずにはいられないのは、やっぱり結びのあの一文。このサゲの爽快感がもう最高に好きです。伏線等も綺麗に回収しつつ、すべてがこの瞬間のために描かれた物語。とても綺麗で、しっかり壮大なSFでありながらも、その向こうから人の生を伝えてくれる素敵な作品でした。

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和田島イサキ