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異世界への道標のような文章の魔力

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劇作家を夢見る少年と、魔女の森に住む〝彼〟のお話。

面白かったです。内容(人物)が個人的な趣味に直撃している、というのもあるのですけれど、それ以上にとても完成度の高いお話でした。

冒頭で鷲掴みにされました。ただの道案内のような文章の、でも引き込まれるみたいな美しい流れ。そこに散りばめられた無数の情報。道順を説明されているはずなのに、伝わってくるのはその世界の有り様。こうしてたっぷりタメを効かせた後での、最後一文の収まりの良さ。

ここでいきなりノックアウトされて、そのまま貪るように最後まで。

読んでいてビリビリ心のセンサーに響いてくる文章。こんなにも読みやすく、また様々な想像をかき立てられる文章はなかなかお目にかかれません。

内容はもう、単純にストライクでした。人物が良いです。彼らの振る舞いや言葉。血が通っている、というか、存在にまったく嘘を感じないところが魅力的です。あともう、単純に、〝銀の髪〟が好きです。キャラクターとして好みど真ん中というか、心の内側からメリメリ何かを揺り起こされるような感覚すら覚えました。大好き。

和田島イサキ

登録:2021/10/5 23:47

更新:2021/10/5 23:47

こちらは和田島イサキさんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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610 light-years Love

来世における巡り合いのお話(※語弊のある表現)

 約九十年の人生の締めくくり、間抜けな人生だと自嘲しながらも、でも満ち足りて往生するひとりの男性のお話。  しっとりと落ち着いた描写が胸に沁みる、切なくも優しい手触りの人間ドラマ、のようなSFです。ドSF。どうやってもネタバレになるというか、いやそもそもタグの時点で明かされてるも同然な部分なので〝そこ〟についてはもう気にせず触れてしまうのですが(困る人はいますぐ本編へ!)、シミュレーション仮説をモチーフにしたお話です。その辺りを端的かつ印象深く象徴しているのが、本作のキャッチである『あなたの愛する人は本当に実在するのでしょうか?』の一文。これ好きです。本編の内容を読み終えてからだと、より強く意味合いが強調されるような感覚(後述します)。  導入であるところの「九十年の人生」、それはすべて仮想現実だった、というところから始まる物語。宇宙船での星間航行中、どうしても持て余すことになる長い時間を潰すための、娯楽としての人生のシミュレーション。要は長い夢から覚めたようなもので、さっきまでの人生はすべて作り物でしかなかった、というのがこのお話の肝というか前提になるわけですけれど。  ここで面白いのがこの主人公、というか作中の人類全般のことなのですけれど、寿命が半永久的に続くんです。現生人類の人生一回分の時間くらいは、ほとんどあっという間の出来事。さすがに未来(千年後)の世界だけあって全然違うと、それ自体は特段なんてことはないのですけれど。  宇宙船のコンピュータによってシミュレートされた方の人生、それが千年前(作品外における現代)の世界であるということと、そして『シミュレーション仮説』というタグ。これらの意味するところというかなんというか、まあ要するにメタ的に見ることで作品の主軸とはまた別の妙味を上乗せしてくるという、この構造とそのさりげなさにニヤリとしました。あくまでも副次的に書かれている、そのお洒落というか上品な感じ。  さて、その上でその主軸、物語のメインとなるドラマなのですが。まんまとやられたというか綺麗に決まったというか、きっちり組まれた構造の綺麗さにうっとりします。単純にロマンティックないい話でもあるのですけれど、これ構造だけ見てちょっと見方を変えるなら、ある意味転生ものみたいなところもあるんですよね。いわゆる前世からの生まれ変わり、離れ離れになった運命の相手に再び巡り合うお話のような。王道であり古典でもあるその類型を、でもただSF的な設定の上に持ってきただけでなく、まったく違う手触りに変えてみせる。物語を自分の(作者自身の)ものにする、というのは、たぶんこういうことなのかなと思いました。  あと大好きなところ、というか絶対触れずにはいられないのは、やっぱり結びのあの一文。このサゲの爽快感がもう最高に好きです。伏線等も綺麗に回収しつつ、すべてがこの瞬間のために描かれた物語。とても綺麗で、しっかり壮大なSFでありながらも、その向こうから人の生を伝えてくれる素敵な作品でした。

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和田島イサキ