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それはホラーか、それとも純文学か。強い引きと謎によって彩られた夜(ヨル)の記憶。

5.0
1

 神域である山や森で、また街や里からなんの前触れも無く人が失踪してしまう事件「神隠し」が多発するなか、主人公優の身に不思議な出来事が巻き起こる──


*


 この作品は、ジャンルがホラーになってこそいますが、様々なジャンルの融合体ではないかな、と感じました。

 確かに根幹の部分はホラーなのかもしれません。ですがそれでいてミステリーでもあり、またヒューマンドラマでもあり、はたまた、純文学的でもある。


 そんな本作の魅力を端的に表現すると、謎や仕掛けの多さであり、エピソードごとの引きの強さでしょうか。

 度々挟まれてくる惨劇や、不可思議なイベントの数々に、「どうして彼女はこんな行動をしたのだろう?」「この先、どうなってしまうのだろう?」と気になり、自然とページを捲る手が止まらなくなる、そんな魔力に満ちた作品です。

 三人称で綴られる物語なのですが、そこを上手く利用して、主人公である優の人格が、時々「ヨル」と入れ替わるところも本作の見どころ。

 いまの発言ははたしてどっちのものなのか? 巧みな表現に翻弄され、思わず首を捻ってしまうことでしょう。


 主人公──優と意識を共有している「ヨル」とは何者なのか?

 感動の結末を、是非、見届けてください。


*


 ──優が心の中でそっと囁いたとき、紋白蝶は飛び立っていった。壮麗なる青空に向かって。

木立花音(こだちかのん)

登録:2021/10/11 22:31

更新:2021/10/11 22:30

こちらは木立花音(こだちかのん)さんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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木立花音(こだちかのん)