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二つの曲が交差するとき、物語は鮮烈に動き出す

5.0
1

 時は20世紀初頭。

 イングレス連合王国の首都ロンドンにあるピアノバーで専属ピアニストをしていた十七歳の少女、アンジェラは、ある日ピアノバーにやってきたイケメン調律師アドニスと出会う。

 彼のレッスンを受けて超絶技巧のピアノ演奏曲『右手のためのピアノ独奏曲』をマスターし、ロンドンピアノコンペティションで優勝しなければならなくなったアンジェラだったが──?


 この作品の魅力は、冒頭から登場してくる馬車や蒸気自動車など、時代背景を色濃く伝えてくる描写の巧みさ。

 アンジェラなど魅力的なヒロインが見せる細やかな仕草。

 アンジェラがアドニスからピアノのレッスンを受けるさいに描かれる、ピアノに対する作者の知識量。


 等々といったところでしょうが、一番の魅力は、理詰めされた物語の設定、構成と、巧みに張り巡らされた伏線でしょうか。


 ここで、私が特に大好きなエピソードをふたつ紹介します。


※1─4 ピアノステージ

 アドニスとアンジェラがピアノ連弾で対決するシーンなのですが、とにかく疾走感と躍動感が凄い! 私が自作の中で戦闘シーンの参考にさせて頂いた回です。

 ピアノなのに戦闘シーンの参考になるの? と疑問に思うかもしれませんが、百聞は一見に如かず。まあ、見てみなさいって。


※5─3 期待以上の演奏を


 アンジェラが得意としている『鎮魂歌』

 マスターしなければならない『右手のためのピアノ独奏曲』に隠された秘密。

 そしてタイトルに隠されているヒント。

 何故、ヴィシュタインなのか?

 何故、コピーライトなのか?


 所々に配置されたこれらの情報がひとつに繋がったとき、鳥肌もののタイトル回収劇がやってきます。それがこの「期待以上の演奏を」の回なのです。ここから先はもうノンストップ。ページを捲る手が止まらなくなるでしょう。


 さあ、今こそあなたも、音楽×冒険×スチームパンクの世界へ!

木立花音(こだちかのん)

登録:2021/11/11 20:51

更新:2021/11/11 20:50

こちらは木立花音(こだちかのん)さんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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木立花音(こだちかのん)