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読了したその後で、もう一度読み返してもらいたい物語。

5.0
1

 船が見えるまで、あと十秒。いや、五秒。サン、ニ、イチ──。


 僕とばーちゃんと、二人だけが暮らしている島に、度々やってくる少女──アカリが、荷物を満載したクルーザー船で接岸するシーンから、物語は幕を開けます。

 二人プラス時々一人の、平穏な日常が続くはずだった毎日は、ある日、島に船ごと流れついた漂流者の存在で、少しずつ壊れ始める……。



 この物語に登場してくる主要人物は僅か四人。主人公のハジメと、ばーちゃんと、時々島にやってくる少女アカリ。そして、中盤から登場してくる謎の男。

 舞台も実にシンプルで、僕とばーちゃんが暮らしている島だけで物語は進行し、そして完結します。


 しかしながら、描かれるテーマは実に壮大。

 物語の中に紛れ込んだ”異物”により日々は変貌を遂げ、やがて世界の構造にまで及ぶ話に発展していくのです。


 もしかしたらこの先の未来、本当にこんなことが起こり得るんじゃなかろうか? と薄っすら考えさせられる結末。そんな結末まで辿り着いた後で、是非、もう一度冒頭部分を読み返して欲しいですね。


 きっと、なにか違う見え方があると思いますよ?


 さて、筆者の卓越した筆力で丁寧に描かれる本作は、短編でありながらも読み応えは十分。

 純文学好き。SF好きの双方に、自信を持ってオススメできるタイトルです。

 また、筆者の代表作を知っている方なら、『ああ、何処かで見たような』という既視感を覚えるかもしれません。実際、私もそうでした。

 ですが、それが『筆者の意図的なもの』だと聞かされてから、すとんと腑に落ちたものです。


 気になった方は、お手に取っていただけると幸いです。

木立花音(こだちかのん)

登録:2021/11/11 20:54

更新:2021/11/11 20:53

こちらは木立花音(こだちかのん)さんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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木立花音(こだちかのん)