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@オノログ

チートなし。ステータス・オープンなし。だがそこに、ヒューマンドラマあり。

5.0
1

 父親が遺した謎のウイルスによって、ゾンビが蔓延し荒廃した地球。日本で必死に生き抜いてきた彼は、抵抗虚しくゾンビに噛まれ、薬を呑んで死んだ。

 だが、その先で待っていたのは管理者と名乗る不思議な少女。彼女は異世界にまでゾンビが召喚されてしまった事を語り、倒して欲しいと告げてくる。こうして貴族の一人息子・ウェスティンとして転生した彼は、異世界でまで父親の尻拭いをすることに……?



 舞台はゾンビが召還されてしまった異世界、エリス国。

 その地に神に選ばれし勇者──神託者として転生したウェスティンでしたが、五歳という年齢のせいか勇者としての力はまったく開眼しておらず、冒頭から苦悩を重ねます。


 いわゆる異世界転生系ファンタジーなのですが、昨今よく見られる作品とはまったく趣が異なります。

 チートなし。(むしろ弱い)

 ステータスの概念なし。(冒険者のランク表示はあり)

 所々ほのぼのとした展開もありますが、シリアス・ファンタジーといえば雰囲気が上手く伝わるでしょうか?

 

 作品の魅力はなんといっても豊富な登場人物と、各々がしっかりとした意思を持って動くヒューマンドラマ作品であることです。

 また、筆者の文章力、表現力が非常に巧みで、ウェスティンの心情と時々一体化してしまうほど。

 多くの出会いと別れ。様々な困難を乗り越えた末に冒険者となったウェスティンが遭遇する「聖クレスタット編」におけるラストバトルでは、思わず「頑張れ!」と拳を握り締めてしまいました。


 その後で訪れる辛い別れ……。


 ゾンビ化という現象を、作品のテーマとして上手く落とし込んだ展開と、「兄」としての役割をウェスが託される結末に、じんわりと涙しました。


 この先もまだまだ続くウェスティンの冒険活劇を、見届けてみませんか? 五歳とは思えぬ (まあ中身は青年なので笑)彼の人間臭い魅力と、個性的なサブキャラクターたちの虜に、きっとなってしまうことでしょう。

木立花音(こだちかのん)

登録:2021/11/11 21:03

更新:2021/11/11 21:02

こちらは木立花音(こだちかのん)さんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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木立花音(こだちかのん)