抒情的で優しくて、でも心や記憶がないから「自分」を探して人間との接点を求め続ける戦闘アンドロイドなSFを読んでみたい方におすすめしたいと思います。
主人公はノンフェラスと呼ばれる戦闘用の人造人間です。見た目はほとんど人間と同じですが、外見に決定的な違いがあって、そこで人間とは区別されることがあります。しかし彼らにはそれを「差別」だと感じる心や傷ついたりする長期の記憶がありません。
そう書くと自由を求めて戦う話のようですが、彼らは自分たちの存在意義が「人間と人間の街を守ること」であるのを知っています。製造されて(生まれて)数百日で、強大すぎる敵と戦ってあっけなく壊れて死ぬ存在です。
死ぬってなんだろう。
ノンフェラスたちはこんなにも強いのに。何も恐れずにあっさり壊れて死んでゆく。
人間たちは、こんなにも弱くてもろいのに。心がはりさけそうなほど苦しくても、立ち向かおうとする。
筆致の荒々しく踊るダイナミックなバトルシーンと、ノンフェラスを取り巻く人間たちの思惑や、心がないはずのノンフェラスたちの、単純だからこそ繊細な思いの揺れ動くさまとが、優しく、ときに冷酷に描き出されます。
とにかくすごくいいです。ぜひどうぞ(唐突に胸がいっぱいになって語彙が消失
登録:2021/12/18 11:46
更新:2022/1/13 17:22