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往きて還りし物語

5.0
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一読すれば分かるように、冒頭と末尾で同じ楽曲が使われている。

あるアイドルに提供した、主人公の手による曲だ。それが出発点であり、到達点となる。


物語の基本的な形は、「ホビット」や「指輪物語」のような「往きて還りし物語」であるという。

むかしむかしに主人公が家を出て、冒険の旅をして、導師の導きや仲間の手助けで苦難を乗り越え、目的を達成して、家に戻ってきた時にはひと回りもふた回りも成長している……というひとつの類型だ。

味志ユウジロウさんの本作も、見事にこれに当てはまる。

タイトルから連想するイメージ、作中で南国に「雪」をどう降らせるか? といった展開がややファンタジーであっても不自然さを感じさせないのは、作品が物語構造になっていることも影響しているのかもしれない。


だが、本作はよくある「退屈な現代版おとぎばなし」ではなかった。

それは異国情緒あふれるダナン(ベトナム東部沿岸の都市)という舞台が、挫折したミュージシャンの逃避行を立派な冒険に格上げしているからかもしれないし、導師である姉やヒロインのミーという魅力的な登場人物を配することで、読者の気を引くことに成功しているからかもしれない。

ストーリーの基調は明るく現実的で、清潔感がある。主人公の身に降りかかる衝撃的な出来事や、読者の予想を大きく裏切る展開はない。それでいて読者を惹きつける世界観には、どことなく「青いパパイヤの香り」に描かれたサイゴン(ベトナム)の風情と共通するものがあるように感じた。

作者は「日本とベトナムを結ぶ作家」を目指すと標榜しているが、この作品の出来栄えを見れば、もうすでに「なっている」と言ってもよいのではないだろうか。


仕事と挫折、夢、恋愛を絡めたヒューマンドラマがどう展開するかについては、読者ご自身で確かめていただきたい。

きっと、ダナンという街に行ってみたくなるだろう。

はやくもよいち

登録:2021/12/25 10:56

更新:2021/12/26 09:16

こちらははやくもよいちさんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

同じレビュアーの他レビュー!!

確保できません!

まるでアイディアの玉手箱(ジャックポット)や!!

 ネタバレなしで。  他の方のレビューにあるように、豊かな発想とリアリティを持たせるための細部の作り込み、そしてよい子たちのイメージを壊さないための配慮など、書き慣れた作家による熟練の技を堪能できる一作である。  おそらく一から始めたのではなく、日頃から考えてストックしていたメモを使用したのだと思うが、これだけのネタをここで使っていいのか? と思わせるほどの大盤振る舞いは、作者のホスピタリティがいかんなく発揮されたものだろう。読者に楽しんでもらおう、というサービス精神に溢れた極上のエンターテインメント。  四畳半がどこまでも続いていたり、大阪城の下にもうひとつ国会議事堂が存在する小説のごときホラな世界観(いい意味で!)は、私の最も好むところだが、共感してくれる方々も多いことと思う。  クリスマス本番前に、ぜひ読んでいただきたい作品だ。 補足:  しのき美緒さんによるエブリスタ上の企画、「アドベントカレンダー2021☆」の一作である。 上記の内容でエブリスタ上にレビューを上げたところ、作者からコメントをいただいた。 私は驚いた。その中で、「ネタはほぼストック切れ……今回は一から作りましたw」との一節があったからだ。  よほど周到に下調べなどの準備をしたと思っていたのだが、当てが外れたようだ。えふえふ氏は余程たくさんの引き出しをお持ちに違いない。ネタは尽きても、手練れのスキルは冴えわたっている。  楽しい作品を読ませていただいたことに感謝したい。

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はやくもよいち