現代の夜の都会が舞台という設定が、物語にいい雰囲気を醸し出してます。
夜の街の生活って昼間の生活とは違う日常。どこがというのは説明しにくいですが、読んでいると、その雰囲気が伝わってきます。
この作品の、そんな描き方も好きなんですが、なんといっても、魅力的なのは主人公たちのキャラクター性です。
主人公は、人間のチハヤと幽霊のダブル主人公。
ふたりはあるきっかけで交流を持ちます。
コンビにはなりましたが、双方なにかが欠けています。
お互い、相手が何が足りないか、あるは必要なのか漠然と気が付いてる印象があります。そこを起点とする気遣いや行動が読んでいて愛おしいです。
幽霊であるシカは大昔に生きてたので現代人のチハヤとはちぐはぐな会話をする事がしばしば。
それがコミカルなんですが、沈みがちな物語に適度に明るさが足されていて、物語としていいバランスになってると思います。キャラの印象付けとしてもグッド。
比喩的な表現を含めた描写の描き方は、キャラに深みを増してる感じがして読み応えがあります。
R15なので性的描写が苦手な人には注意が必要。
その性的表現に関しては、安易に行為を描写というわけではなく、情緒的に寄せている印象なので作者さんの技術力だと思うのと、R15を考えるれば適度ではないかと思います。
なくてもあれですけど、主人公のアイデンティティーに関係すると思われるので、逆にないと深みが増さないというか……僕は、あって正解なのかもと思いました。(ネタバレになる恐れがあるので多くは語りません)
幽霊と人間のコンビの物語はアマチュア作品、映画を含めた商用作品にも多い設定ですが、『シブヤのサンゾク』に関していえば関係性が珍しいパターンだと思いました。
シカは幽霊ですが、生きてるチハヤも成仏してないんですよねえ。
その心情の描き込みが物語の大きな魅力であり、感情移入してしまう部分になってると思います。
シカとの交流と事件に関わっていくことでチハヤの心が癒やされていくといいなぁ……とイチファンとして願ってます。
この作品を読んでいると作者さんに、いろいろ才能を感じます。
シブヤのサンゾク おすすめですぞ!!
登録:2021/12/31 16:11
更新:2022/1/3 00:05