最後まで読んでも後悔はしません
有名漫才師トム・ブラウンみちお氏の処女小説ですが、意外にも、全3話の短編で主人公が大冒険の末に目的を果たすという物語が完成されていて、読後感は良かったです。
小説の作法みたいなところはあえてスルーします。
まず、起承転結の起で、主人公は除雪機でミンチになります。助けようとした男の子もミンチになります。そして異世界に転生すると、なぜか主人公と男の子は合体しています。
なぜ合体するのか? トム・ブラウンみちお氏にとって合体は重要な小説のテーマらしいです。
実は終盤で再び合体が出てきますが、それなら序盤でわざわざ主人公と男の子を合体させる必要はなかったという見方もあると思います。後で合体するのだから、最初は主人公と男の子がそれぞれ異世界に転生していてもいいと思います。短編なので登場人物も少なかったし。
主人公は異世界転生のお約束で最強なので、異世界で魔物を楽々倒します。そしてヒロインの魔法使いと旅に出ます。次々と巨大モンスターや盗賊を倒す主人公の勇姿がダイジェストで語られます。映画ブレイブストーリーみたいにBGMには主題歌が流れている場面です。
二人の旅は目的が無いように思われますが、ビッグバンベヒーモスとの戦いで飲み込まれた主人公は、ビッグバンベヒーモスの腹の中に囚われた守護天使と会い、自分が異世界に転生した意味を知ることになります。これが起承転結の転で、物語は一気にクライマックスに向かいます。
ビッグバンベヒーモスを倒すため、主人公と男の子と守護天使が合体し、巨大な力を手にしてビッグバンベヒーモスを一撃で倒します。伏線の回収! 合体! 巨大な敵に勝利! しっかり読者にカタルシスを与えてくれる展開となります。
最後はヒロインがビッグバンベヒーモスの脳味噌まみれになって小説は終わりますが、それまでの戦いのたびにヒロインが酷い目に遭う描写を入れていたおかげで、これが小説のオチとしてちゃんと機能する構成になっています。