人を呪わば穴二つという言葉があります。
主人公はある人物に復讐をしかけようと、怪しげな男と契約する為にボロい店のドアをくぐります。
背景描写がよいですね。
閉店の看板ばかりが並ぶ道にあるボロい店……内部は散らかり点滅する電球。古びた異臭がしてきそうな店が脳裏に浮かびます。
そして個性的な風貌の、店主と思われる男性には名前がない。
物腰柔らかなのに、どうにもうさん臭さが目立ちます。一体この物語はどうなっていくのかと、わくわくさせてくれます。
主人公は冒頭より憤っており、ある人物を殺したいほど恨んでいる。復讐の契約にどんな対価が必要なのかわからないうえに、どうなっても構わないと約束させられるのは正直躊躇します。それでも契約してしまった主人公の恨みは、計り知れません。
けれどせめて主人公は誰かに復讐を依頼するのではなく、自分自身の手で実行すべきだった。
そうすれば取り返しもついたはずなのですが……
人を呪わば穴二つ。主人公は自分の短慮により、大きすぎる代償を支払うことになります。
人の心の醜さ、弱さ、疑心暗鬼。それにつけこむ男性の存在がうまく融合し、後味の悪いお話に仕上げてくれています。
登録:2022/6/5 14:51
更新:2022/6/5 14:50