ユーザー登録・ログイン

新規登録

ログイン

作品

レビュー

登録/ログイン

その他

オノログについてFAQ利用規約プライバシーポリシー問い合わせユーザー管理者Twitter
レビューを投稿
書籍化
コミカライズ原作
ジャンル別
サイト別
サイト関連
運営している人

@オノログ

潮風とハマナスの香りに誘われて……

5.0
0

 主人公・澪の住む人魚の隠れ里へ、「ニンゲン」である政府の役人が訪れる。

 澪と、彼女が姉のように慕う砂帆が砂浜を歩いていると、役人を連れた大人たちの姿が……。

 役人がこの地を訪れた目的は「人魚の妙薬」を手に入れること。

 里の長老に命令され、砂帆は役人とともに外界へ……澪は暫しばしの別れを強いられることになる。


「その肉は不老長寿の秘薬に。

 その生き血は万病の治癒に。

 その胆と灰は死者の蘇生に。」


 利用し、利用されて……本当に利用しているのは人間と人魚のいずれにあるか。



 この作品を拝読した時、冒頭の描写から引き込まれました。

 磯の香りや、波の音が今にも聞こえてきそうな……自分が今、海にいるような感覚になれます。

 作中の冒頭にある、

「踏み締める白砂、その都度キュウキュウと不可思議な音が鳴る」

 この後の文章でも砂の音の描写がいくつかされており、私は過去に北海道の室蘭にあるイタンキ浜で聞いた鳴き砂 (終盤でも「鳴り砂」であることが分かります)のことを思い出しました。

 イタンキ浜以外にも、京都の琴引浜ことひきはまや島根県の琴ヶ浜ことがはまなど、全国の様々な場所で聞くことが出来るようなので、どんな音がするのか、実際に聞いてみたい方は場所をよく調べた上で、現地を訪れてみるといいかもしれません。


 ハマナスの花言葉――それは、作者からの一言コメントにある「悲しくそして、美しく」

 まさに、人魚である彼女たちの生き様を象徴している花だと言えます。


 人魚の伝説を題材にしたシリアスな物語。

 丁寧で美しい描写に、読者は最後まで引き込まれるでしょう。あなたも一度読んでみてはいかがですか?

櫻井 理人

登録:2022/11/14 18:00

更新:2022/11/14 17:59

こちらは櫻井 理人さんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

同じレビュアーの他レビュー!!

C-LOVERS

自らのコンプレックスと向き合い成長する6人の男女が織りなすショータイム

 この作品を読み始めた時の第一印象は「奇抜」の一言だった。  というのも、OPENING act を読むと分かるが、この作品が小説兼「舞台」に思えたからだ。私たち読者は、いわば「観客」ということになる。  臨場感あふれる冒頭に魅了され、読み進めていくと、登場する主な「役者」は6人の男女。  話が進むにつれて明かされていく彼らの境遇は、決して恵まれているとは言えないものだろう。そして、その境遇であるがゆえに抱えたコンプレックスは、とても根深いものだ。  時にそのコンプレックスは、同じような悩みを抱えた「観客」たちの心を揺さぶることもあるだろう。かく言う自分もそのひとりだった。克服するには、自分から踏み込んでいく勇気が必要……と、頭では分かっていても、実践するとなると簡単には出来ないものだ。  だからこそ、彼らにより共感することが出来たのかもしれない。  時間をかけながらも、彼らはそれぞれ、自らのコンプレックスに向き合い、克服しようとする。共通するのは「ひとりで」ではなく、「みんなで」向き合っていくこと。改めて人との繋がり、絆が大切だと思わされた作品だ。  次に彼らの舞台に魅了されるのは、そこにいる「あなた」かもしれない。  あなたが辛いと思った時、笑いたいと思った時……舞台の「観客」として、客席に足を運んでみてはいかがだろうか?

5.0
0
櫻井 理人