記憶というのは、あるものに紐付けられる。
紐付けられたものが、何度も記憶を呼び覚ますのだ。
主人公の”ぼく”は、毎年夏になると、祖父母の家に小旅行を兼ねて行っていた。
この夏にしか会わない人がいる。従妹の千夏という少女である。
二人の記憶に残っていたのは、UCCのコーヒーだった。
このコーヒーは甘くて、苦い。
ぼくに残されたのは苦味だった。千夏に残されたのは甘さだった。
二人の思い出についてはネタバレになるので、ここでは深く触れないことにするが、コーヒーの味と共に味わってほしい。
田舎の長閑な風景、匂い、音、そういったところから、ノスタルジックな気持ちになれるのも、本作のおすすめしたい点である。
千の夏を超えた先に思いを馳せながら、コーヒーを飲みたい作品だ。
登録:2022/12/9 13:57
更新:2022/12/9 13:57