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胸締め付けられるおとぎの恋

5.0
3

どんなちいさな命も尊び、愛することのできる少女・イリスと、ひょんなことから彼女と手紙のやり取りをすることになった騎士・フェリクスの物語です。


イリスは心優しく聡明で、茶会のみんなが嫌がるシャクトリムシだってへっちゃら。どころかそっと逃してやるのです。


物語の構成の隙のなさ、情景が浮かぶようなうつくしい文章、イリス視点のどこまでも優しい世界への眼差し、フェリクスの愛情深さ。その全てが水のように溶け合い、ふくらみ、まるでお伽話を読んでいるような心地になります。


どうして彼らが惹かれ合うのかを、不用意に愛や恋といった単語を用いず、嵐のような愛憎を挟むこともせず、おだやかな海のような物語全体で説得力を持たせている手腕は、実に見事です。

それでいて、間違いなくこのお話はふたりの「恋物語」なのです。せつなくなるほど。


きっと物語の結末にたどり着いたとき、登場人物たちとの別れが寂しくなるし、彼らみんなの幸せを願うほど、いとおしくなると思います。



フェリクスの過去は本作ではあまり書かれませんが、番外編もありますので、気になった方はどうぞ。

バケタ

登録:2021/7/11 21:43

更新:2021/7/23 17:15

こちらはバケタさんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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5.0
1
バケタ

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5.0
0
バケタ