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【完結】心情描写巧みな短編作。心穏やかな一時間を過ごしたい方にオススメ。

4.5
0

全18話 31,615字 読了まで約1時間


文章力はかなり高いです。文芸寄りの文体です。

活き活きとした心情描写に引き込まれます。

現代人的な苦悩をじっくりと描いていますが、読み口は爽やか。

人称すらも効果的に使ってみせた、配慮の行き届いた作品です。


以下、詳細をレビューしていきます。


舞台は現代日本。主人公は何をやってもうまくいかず、そんな自分を卑下し続けている男性です。彼は小学生の時に起きた悲劇の影響で、人生の歯車を狂わされてしまいました。


本作は断片的にしたためられた主人公の未来、現在、過去のピースを眺めながら、彼の境遇と苦悩に思いを馳せる作品です。都会と田舎、現在と過去、現状と憧憬、これらの対比が温度感を伴って表現されており、主人公の心情にすんなりと近づけます。


主人公は卑屈であるものの、善良な人物であり、自然と応援したくなるキャラクターです。悩み事を克明に描いていますが、そんな主人公が嫌で読書が止まるということは無いと思います。


反面、全てが整然として美しく、読み物としての起伏には乏しいです。もちろん、これは優れた美点でもあり、ある一人の人間を純粋に描き切っていると言えます。


文章力も非常に高く、引っかかりがほとんどありません。個人的には"蚊"のくだりと、反復表現のうまさにぞくりときました。


この作品では時折一人称と三人称が入れ替わるのですが、いつかの三人称には羨望を、いまの三人称には希望を感じて心に響きます。この表現は素晴らしかったです。


多分、誤字脱字はありません。ですが、改行が少なすぎて見辛いところが多く、せっかくの文章が単調に感じられて残念です。


以上、しみじみと読書に勤しみたい方に強くオススメできる作品です。心穏やかな一時間を過ごせるうえ、清々しい読後感も得られると思います。

tatsukichi

登録:2021/7/12 18:12

更新:2021/7/23 17:15

こちらはtatsukichiさんが読んだ当時の個人の感想です。詳細な事実については対象作品をご確認ください。

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まつかひをんな

【完結】読了まで先が気になる長編作。ミステリーらしさを求める方は要注意。

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3.5
0
tatsukichi

カンブリア・ヒルズ

【完結】テーマ性に富んだふしぎ系SF。独特な世界観が心を掴んで離しません。

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4.5
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tatsukichi