不思議な青年が語る「ある都市」にまつわる物語です。
かといってその物語は極めて具体的なものではなく、その都市の様々な概念、人々の思想、自然との関わり……などの抽象的なものですが、これを語る文体が非常に麗しい。
そこからは、哲学的、または宗教的な美や知さえ感じます。
決して長くはない物語の中から、その都市から醸し出される「世界」いや、「宇宙」が広がっていく様子。
そこからは、この作品は、書き手の教養の奥深さなくては成立しえない物語、と感嘆せざるを得ません。
古代神話を読んでいるかのようにさえ感じる、溜息ものの作品です。
人間の想像力とは、斯くも豊かで美しい。
多くの方に読まれてほしいと心から願います。
登録:2021/7/12 22:53
更新:2021/7/23 17:15