短編:約24,000字 読了目安:48分
本作は鞍馬アリス 様による公式フェア「異世界設定コン」の投稿作、『ミトラニア大陸誌《街編》』を基礎として、そこに作者様が物語を積み上げた作品です。
ちなみに、第8話「コルディウス 〜神殿を積み上げる街〜」は名前の通り、神殿が積み上がった街です。つまりは神殿 on the 神殿ということで、ちょっと想像しにくいところに興味を惹かれるのではないでしょうか。
数々の不思議な街を旅する主人公エルマは、天才画家とのこと。
しっかりと絵を描くカンバス作りから始め、支えにはイーゼルを使い、パレットに広げる絵の具も豊富に持ち歩いているようです。写真と違って時間がかかりますから、数日かけて1枚の絵に取り組むのも当たり前です。
私自身は人に見せるような絵を描ける人間ではありませんが、そうした絵を描くことの基礎が丁寧に描写されており、抜かりない作者様の姿勢に好感を覚えました。
様々な街を旅する物語は、作者が思い描いた数だけ新たな街が生まれ、どこか移り変わる車窓を眺めているような気分になります。過ぎ去った風景は一瞬で遠くに離れ、時間を巻き戻して同じものを見ることは叶いません。
一方、旅人は町の外から来た余所者ですから、さすがに理由なく排斥されはしないまでも、手放しで歓迎されにくい存在に思えます。
しかし、本作の主人公エルマは天才画家です。
彼女の目に映る街の風景は彩りにあふれ、出会った人々とのやりとりすら、永遠に絵画の中へと収めてしまうかのようです。さらに出来上がった素晴らしい作品を見て人々は喜び、彼女の功績を讃えます。
そうしてエルマは絵画を通して、訪れた街そのものと一体化しているような気がしました。
もしよければあなたもエルマの旅に付き添い、不思議な街の風景を心に思い描いてみては如何でしょう?
登録:2021/7/13 10:11
更新:2021/7/23 17:15