全19話 91,398字 読了まで約3時間
・読みやすい文章です。文体は柔らかく、淡々としています。
・SF的なミステリー要素、テーマを含んでおり、結末まで興味深く読み進めることができます。
・作者の思いが伝わる穏やかな小説です。考えさせられるものがあります。
以下、詳細をレビューしていきます。
物語は現代日本から始まります。主人公は製薬会社で働く普通の男性と、大学で倫理学を学ぶ普通の女性です。
散りばめられた興味深いミステリー要素を回収していく序盤、ふしぎな世界観の中で坦々と使命を果たす中盤、テーマを深めながら結論へ向かう終盤と、各セクションで何かしらのフックが存在しており、私は飽きずに読み続けられました。
難度の高い挑戦をしている割にはスムーズに話が転がっているな、という印象は受けます。個人的には問題ないのですが、好みが分かれるところだと思います。
登場人物はキャラクター性に乏しく、よって人間ドラマも薄味です。その分、SF的な要素や展開に集中できるとも言えます。また、こういうキャラクターたちだからこそ、この結論を導けたのだろうなという妙な納得感がありました。
文章は読みやすく、誤字脱字もありませんでした。たまに視点が混線し、引っかかりを覚えることもありますが、量的には多くありません。
シビアなタイトルには考えさせられました。後書きまで読んで、なおさらそう思いました。作者様は相当な覚悟を持ってこのタイトルを付けられたのではないでしょうか。勝手ながら、そんな想像をしてしまいました。
以上です。多くの方に読んでいただきたいと思えた作品ですので、お時間ございましたら是非どうぞ。
登録:2021/7/13 19:40
更新:2021/7/23 17:15