うだつのあがらない男が競走馬としての人生を送る話です。 特徴的なのはすでに馬生二回目から始まるところです。前の馬生もあって物語に奥行きがあり、とても面白いです。 主人公は表面的には軽いノリですが、実際には勝負に対してとても熱くてイ負けたくないと身を削るほど情熱を燃やします。スポ根ものに通じる面白さで、胸熱くなるお話です。 馬の個性、競馬を愛する人、競馬にかかわるすべての人の熱さが詰まっていてとても面白いです。 二回目にもかかわらず一筋縄ではいかない主人公の馬を何とか乗りこなそうとする人々とのやりとりも楽しいですし、色んな人の思惑や思いがのっているのがよくわかって、わくわくして競馬をよく知らない人間も競馬場に行ってみたくなる要素が沢山あります。 本編は綺麗に完結したうえで、閑話もあり続いていて長く楽しめます。 元々競馬が好きな人も楽しめる小説だと思います。書籍化するのですが、表紙もとてもいいです。
裏切られたお嬢様による「○○?もうないわ。〜恋人?最初からどこにもいなかったわ」の一連の台詞が絶望の表現としてとても好み。 自己肯定感を奪われた転生後のお嬢様の主観である地の文は、序盤は特に暗くて重いです。この地の文の重さが私は好きですが、好みが分かれるかもしれないです。 お嬢様の自己評価と他者からの評価は天地ほどの差があるので、ある意味信用できない語り手とも言えますね。