本作は競走馬に転生した男性が主人公ですが彼の主観で語られる事は少なく、周囲の視点を通して物語が進む群像劇です。 人によって好みが分かれる部分でしょうが個人的には良い意味で神様転生要素が薄い作品です(※転生自体は作中で重大なポイントです)私は「現代が舞台であまりに現実離れした主人公は浮いててちょっとな……」と感じる事があるのですが、そんな私でも気にならずに読み進められました。 主人公を管理する調教師や騎手が変な馬だとは思いつつもその力を信じ、勝利の為に試行錯誤する姿は素直に応援したくなります。 群像劇と評したように主人公サイドだけでなくライバルサイドの描写も豊富で、それが本作の魅力の一つです。 様々な出自とファンの夢や期待を背負った馬達。そんな馬を愛し、勝たせる為に努力を惜しまない関係者。 競馬という競技の性質上、一度の戦いで決着がつくわけではなく幾度となく激突しますが、その過程で主人公だけでなく相手にも負けてほしくないと感情移入してしまいます。 ライバル達が一堂に会するレースがあるのも競馬ならではの醍醐味でしょうか。 他にも魅力はありますがネタバレになりそうなのでとりあえずここまで。 競馬小説という取っつきにくそうなジャンルの作品ですが、使った時間に見合う面白さはあるのでぜひこの機会に一読を。
うだつのあがらない男が競走馬としての人生を送る話です。 特徴的なのはすでに馬生二回目から始まるところです。前の馬生もあって物語に奥行きがあり、とても面白いです。 主人公は表面的には軽いノリですが、実際には勝負に対してとても熱くてイ負けたくないと身を削るほど情熱を燃やします。スポ根ものに通じる面白さで、胸熱くなるお話です。 馬の個性、競馬を愛する人、競馬にかかわるすべての人の熱さが詰まっていてとても面白いです。 二回目にもかかわらず一筋縄ではいかない主人公の馬を何とか乗りこなそうとする人々とのやりとりも楽しいですし、色んな人の思惑や思いがのっているのがよくわかって、わくわくして競馬をよく知らない人間も競馬場に行ってみたくなる要素が沢山あります。 本編は綺麗に完結したうえで、閑話もあり続いていて長く楽しめます。 元々競馬が好きな人も楽しめる小説だと思います。書籍化するのですが、表紙もとてもいいです。
心理描写の表現が独特で面白く、サラッと読める。 「理性を焼死体にする」「英雄の復活(理性が)」が特に好き。 どこまでもブレない狂犬隊長と苦労人の副隊長の関係性が良い。