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さようなら母さん、と灯台守は言った。

3本の鍵が示す真実と少年の選択。いつまでも余韻が消えない物語。

生まれたときから灯台で暮らし、外に出たことがないという少年の話。 十四歳になった日の朝、少年のもとに金、銀、銅の3本の鍵が届けられる。 それぞれの扉の向こうには何が待っているのか。 とても謎めいていて、それでいてひとつひとつのシーンが印象的な作品。 下の見えない灯台。3本の鍵。 白衣姿の青年。黄泉の川と同じ成分で作られた薬。 海と灯台と血のように赤いスカーフ。贖罪を続ける少女。 それぞれのモチーフの配置はミステリアスでありながら、示唆的であるようにも感じる。 それらを丁寧に読み解いていくのが楽しい。 個人的な解釈を述べるのであれば、灯台は主人公の少年の「人生」あるいは「命」の象徴であるように感じる。 そして鍵を渡されたということは、真実を知る権利を与えられたことを意味するのではないだろうか。 物語の世界観についても注目したい。 作中では、黄泉の川と同じ成分で作られたという薬が登場するが、いったいそのようなものをどこから手に入れたのかと不思議に思った。 だが物語を読み進めていくと、どうやらこの灯台は常世なのではないかという気がしてくる。 少女がセーラー服に身を包んでいる理由にも想像が膨らむ。 個人的には、出産の年齢に関係しているのではないかと考察している。 主人公の少年が「子をなせる」ようになったタイミングで鍵が与えられたのも、無関係ではないのかもしれない。 興味深いのは、物語の最初と最後に同じシーンが描かれている点。 最初は仄暗い不安を感じるのに、最後は不思議と解放感がある。 それは「どこにも行けなかった」少年が自分で「選択」をしたからなのかもしれない。 いつまでも聞こえてこない鍵の落ちる音を静かに待ち続ける。 そんな余韻を感じさせる読後だった。

5.0
1
ハルカ⭐積読消化期間

思い出のミントブルー

好奇心を抱き、経験し、またひとつ世界を知る。

美しい表紙画像に心をつかまれました。 ひんやりとした温度が伝わってきそうな涼し気な色。 どこか不思議な色合いで、ずっと眺めていたくなります。 ターコイズ(トルコ石)の写真なのかなと思いましたが、答えは本文の中で語られていました。 チョコミントアイス。 誰もが、一度はその味に興味を持つと思います。 主人公の少女も、アイスクリーム店のショーケースでそのアイスと出会います。 「そんなん食べられへんから、やめとき」 とお母さんにやんわり止められますが、それでも少女は「こんなアイス見たことがない」と釘付けに。 結局お母さんはチョコミントアイスを買ってくれるのですが、さて、それを食べた少女の反応は。 新しい物を見つけて、好奇心を抱いて、経験して、またひとつ世界を知る。 そうやって少女はこれからも成長していくのでしょう。 「結果がわかっていても頭ごなしに止めるのではなく、経験をさせてくれる」という母の愛情に胸が温かくなりました。 『思い出のミントブルー』というタイトルが秀逸。 「チョコミントアイス」とせず「ミントブルー」という色で表現することで、タイトル・表紙画像・本文がひとつの作品としてまとまっていると感じます。 物語の内容は、多くの人が一度は経験するであろうエピソード。 読んだ人の心の奥底にある記憶を優しく蘇らせてくれます。 古い思い出を色鮮やなまま残してそっと宝石箱に収めてくれる、そんな作品です。

5.0
0
ハルカ⭐積読消化期間

うたへうたえ

穏やかで温かい女子学生たちの恋物語

 年齢制限はありませんが、創作百合を扱っておられます。  舞台は現代で、女学生たちが主人公です。現代ならではの「あるある」なシチュエーションにほっこりと温まったり飯テロされたり、描かれる情景そのものはとても穏やかで温かいのに、スパイスを加えるかの如く恋愛感情が絡まってきます。結果として、とても甘酸っぱい読後感。  同作者さんによる『喫茶店フォレスタ』とも共通しているのですが、登場人物たちが優しく、明るく、健気で、まさに光の創作。バンドと短歌って、一見音楽系(という名の体育会系)と文化系で、所属しているメンバーのイメージに差があるような印象だったのですが、それはステレオタイプなものの見方であり、両者は共に韻を踏んだ言葉でリズムに乗りながら想いを伝える芸術であるという共通点があります。その事実にハッとする頃には、きっとこの物語が深く刺さっていることでしょう。  作中の短歌は情景や心情をとても生々しく伝えてきます。一言で言うと、エモいです。  現代創作百合が好きで、人の優しさに触れたい方には是非ともオススメしたい作品です。

5.0
0
和条門 尚樹

半笑いの情熱

この物語を読んだ人の中にも、きっといる存在。

 現代ではSNSの普及により、相手の顔や名前を知らなくても交流出来るようになりました。  家族や友人と一緒の空間にいても、手元の画面を見るばかり。下を向きながら話すなんて日常茶飯事、そんなことも当たり前になってきました。  このお話では、主人公・池原悦弥とその友人・光蟲冬茂が、顔を突き合わせて楽しげに駄弁りながら飲み食いする場面が多く出てきます。ごく日常的な場面ですが、この『半笑いの情熱』という物語においては、とても重要な意味を持っています。  序盤からの『大学生編』では、囲碁部内での部員達との交流とその変化を描いています。  少し遠慮気味だったのが、顔を合わせるたびに段々と打ち解けていく。もちろん色んな人間がいる場ですから、和気あいあいとはいかず、衝突もあります。しかしそれを経て、お互いを知ることが出来る。  大学生という、大人と子供の境界線に立っている年齢の池原悦弥の人間的成長が見られるのが、この『大学生編』です。  対して以降の『小学生編』では、彼の過去と未熟さが描かれています。  その中身は、小学生として経験した出来事とは思えないほど心苦しいものです。「未熟だったから」では片付けられないような、彼が大学生となり部員たちと交流出来ていることが奇跡と思えるほどの、凄惨な過去。  今まで送っていた当たり前の日常が、ひとりの人間と相容れなかった故に大きく崩れていき、自分に牙を剥く。悦弥はそれに対し真っ向から立ち向かい、自分の考えを曲げずに押し通します。けれど数でも力でも負けている彼は体に傷を増やしていき、次第に心にも傷を負い始め、平気そうな顔でいなしていた彼の瞳からはいつしか涙が零れるようになります。  小学生編・秋での雨を願う場面は、無意識に心の中で流していた涙があったのではと思わせる、そんな切ない描写となっています。  そんな過去の苦い体験の合間、箸休め的に挟まれるのが、友人・光蟲と顔を突き合わせた飲み会シーン。  心を痛めながら読んでいた読者にとって一時の休息になってくれますが、悦弥にとってもまた救いと言えるでしょう。この『小学生編』は、悦弥が酒を飲みながら光蟲に語っている形式で綴られているからです。  人は、悲しい過去を隠したがります。それは二度と思い返したくないからです。  悦弥の小学校時代の経験もまた、同じでしょう。  けれど彼は、酒を交わしながら光蟲に語ります。聞き手である光蟲は、それに対し過剰に同情するでも涙するでもなく、彼らしい答えでもって返します。彼らのやり取りは軽妙で、普段のやり取りと大して変わりません。その反応がまた悦弥にとって心地いいのだろうと思わされます。  頑なに人に頼らなかった過去|(小学校時代)。  そして酒を飲みながら自身の過去を語る現在。  向き合いながらも人と人は、反発し合ったり意気投合したり、悦弥と光蟲のように半笑いを浮かべながら、互いの存在を心地よく思ったりします。  この物語を読んだ方にも、少なからず光蟲的な存在がいるでしょう。  読み終えた後にはきっと、向かい合って談笑しながら、「美味しいね」と笑い合いたくなることと思います。

5.0
0
白胡麻

咲夜。人の寿命が見える私と、来年までに死ぬ彼の話。

これは寿命が見える少女の青春と、登場人物たちの人生の一片。

主人公・|加護咲夜《かごさくや》は、特殊な能力を持っている点を除けば、ごく普通の女の子です。 部活内での人間関係に悩んだり、恋をしたり。親友と楽しい時間を過ごしたりと、女子高生らしい等身大の生活を送っています。 しかし彼女の目には、人の「寿命」が見える。 この能力のせいで、咲夜は人の死を極端に恐れていました。 屋上に立つ男子生徒、その頭上に「一」という数字を見て、追い掛けてしまうほどに。 第一話の冒頭から、生死というものが濃密に描かれる本作。 序盤の咲夜は他人の寿命が見えるという能力を持て余し、そしてトラウマを抱いていました。彼女は「自分のせいで救えなかった」という思いから、勇気を出して見ず知らずの男子生徒・|今泉京《いまいずみきょう》の後を追いかけ、彼と対面を果たします。 残りの数字を見て嫌な想像を抱いていた咲夜ですが、後にそれが勘違いだったと分かり、その場で別れる二人。 これが高校の入学式の日に起きた出来事というと、ちょっとラブコメ感がありますよね。 新入生の女の子と、一学年上の男子生徒。いかにも青春の一ページといったシチュエーションです。 あとあと彼が所属する文芸部の一員になる咲夜。 三年生で部長の佐藤太郎、二年生の|生天目未来《なばためみき》、同じく二年の今泉京、咲夜の親友・|夢乃明日香《ゆめのあすか》。このメンバーと過ごす部活動の時間が、学園生活の大半として描かれてきます。 作中で新入部員として拙くも小説を書き始め、最後には全員でリレー小説を完成させる……まさに理想の青春ですよね。ちなみに最後の方では、どんな内容なのか読む事が出来ます。 全てを知った上で目を通すと、かなりグッとくるものがありますよ。 ただ上記は、あくまで部分的なものに過ぎません。 本作で描かれる彼女たちの青春は、咲夜の能力を通して展開していきます。 屋上の件から少し積極的になり、今までずっと重荷として背負ってきた力を他者のために使うようになる咲夜。その味方となってくれるのが、親友である明日香と、親しくなっていく中で能力の事を知った京です。 寿命が「一」になった人間を救おうと奔走する三人。 一人助ければもう一人と、彼女たちの元には次々に事件が舞い込みます。 トラブルを解決していく中で生まれる、人間関係のいざこざ。 重く感じがちな部分ですが、人物たちの発言・態度から感じる不穏さが気になり、読む手を止まらなくさせます。 寿命が見える能力の謎。 京の寿命が依然として「一」のままの理由。 そして、咲夜自身の抱えるトラウマ。 すべての線が繋がる時、この作品の虜になっている事でしょう。 主人公に限らず、色んな登場人物たちの〝人生〟が垣間見える本作、ぜひ読んでみて下さい。

5.0
1
白胡麻

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小説家になろうファンタジー

駅から歩いて20分、そこは王国辺境領。

癒し。圧倒的、癒し。

 日本人の少年と、異世界人の少女。互いに別の世界の人間だと気づかぬままに、遊び友達として重ねる交流。  恋愛というにはまだ拙い、保護欲をくすぐられる純粋な好意。甘い男女交際が砂糖菓子ならば、この二人の関係はふわふわとした綿あめ。これが癒し。圧倒的、癒し。  色々と大変な世の中ですから、たまにはのんびり優しい世界に浸ってみるのはいかがでしょうか?

エブリスタヒューマンドラマ

シーラカンスと黄色い潜水艦

空白が幸せを醸す

 冒頭から、詩愛(しいら)はひとりでいる。  彼女の隣、もしくは向かいに座るはずの浅黄(あさぎ)は思い出の中にしかいない。待っている彼女の立場で言えば、そこに誰も立ち入れない大きな空白だけを残して逃走中なのだ。  出会った時のエピソードや、成功していく過程、彼の失踪など、ラジオの進行に沿う形で、詩愛の回想が差し挟まれる。その中で、浅黄は天才であるが故に、自分の思い通りではない環境の変化に対応することが出来ず、潜水艦を降りたことが語られる。  だがシーラカンスはひとり、耐えて待った。耐えられることが彼女の強さであり、待っていられることが彼女の愛の大きさを伝えてくれる。  この話をキリストが語った「放蕩息子」のたとえ話と重ねるのは、いささかうがち過ぎかもしれない。だが失踪(=放蕩)の末の悔い改めと、迎え入れる側の愛と赦しの大きさは、やはり多くの共通点があるように思う。  私は最初、浅黄は心が弱く、詩愛の脇に空白だけを置いて逃げ出した無責任な男と感じた。だが彼は、ただ弱いだけの人物ではなかったのだ。  もしかすると彼は、詩愛の抱く愛の大きさが見えなかっただけかもしれない。失踪中、彼自身も空白を連れ歩いて、やっと置いてきたものの尊さに気づいたということはありうる話だ。  遠く離れて時間を置いて、それでも彼女が待っていると知り、浅黄は心を決めて戻ってきたのではないか。ぽっかり空いた空白を彼自身と、彼の持つ愛情で埋めるために。  イエロー・サブマリンは再び走り出す。その行く手には祝福が待っているだろう。空白に注ぎ込んでいた愛情を、これからはお互い相手に向けることが出来るのだから。

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「最強」を巡る物語。「役割を果たす」こと。弱肉強食。そして競い合うこと。その一方での、仙人や天狗たちのぶっとんだ価値観と。一旦更新停止中とのこと。続きを気長に楽しみに待とう。