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ジャンル:純文学

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確かにあった、あの夏の日。

河童との遭遇、あるいは青春の一幕。

〈僕の目に見える十数色程度の世界も、安藤の目には様々な彩りに溢れているように見えるんだ。きっと、今目の前に広がる全てが、そう見えているんだ。〉  ネタバレなしの感想にはなりますが、ぜひ感想を読むよりも作品のほうを読んで、夏の郷愁に身を浸してきて欲しい、というのが感想者の本音です。そのあと気が向いたら感想も読んでもらえたら、なお嬉しい、というのも感想者の本音です。  その日、離島に住む小学生の和田隼人が埠頭で出会ったのは、アイスキャンディを一心不乱に舐め続ける河童だった。河童は自らを〈旅河童〉と名乗り、そのアイスキャンディは島の数少ない女の子のひとりである安藤チエから貰ったものらしく、彼女に対して無口で不愛想な印象を抱いていた隼人にとって、それは意外なことだった。  河童と未知との遭遇を果たしたあのひと夏の経験が、少年の心に変化を与えていく。青春ファンタジーの趣きが濃い、不可思議な雰囲気に満ちた作品ですが、新しいことを見聞きし、新たなものと出会うことで、いままでと違って見方で世界を見たり、凝り固まっていた価値観がほぐれ、狭かった視野が広がっていく、少年を〈成長〉へと繋げていくものは誰にでも起こりうる普遍的なもので、自分事として自身の心を作品に寄り添わせたくなるような作品になっています。  隼人とチエ、そして河童。ほほ笑ましいやり取りは心地よく、知らないはずの過去に、その身を浸すような郷愁を覚えてしまうのは、多くのひとが共有する青春の根っこが丁寧に描かれているからなのかもしれません。素敵な作品でした。

5.0
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サトウ・レン

高台の公園

静かな罪の記憶の物語。

 ネタバレには配慮した感想になりますが、真っ新な気持ちで読んだほうが受ける印象が鮮やかになる気がします。未読の方はぜひ感想よりも、作品のほうを。  三十歳を前にして札幌での仕事を退職した〈私〉こと滝本奈緒は、地元に戻った際に、町内の子供たちから「神社公園」と呼ばれていた公園を二十年ぶりに訪れる。人も寄り付かなくなって久しく、いまでは多くの遊具がなくなり、すっかり寂れた様子の町外れの公園で、〈私〉が思い出すのは、小学四年生の春に姿を消した舞のこと……というのが、導入。  誰にとっても偏愛を注いでしまうジャンルや作風がある、と思います。趣味嗜好が大きく関わり、どんな作品がそれに当たるのかは十人十色で、どれだけ似ていても、同じになることはほとんどないでしょう。私にとってのそのひとつが、過去の記憶と向き合う物語、ふいに訪れる過去からの罪と対峙する瞬間を描いた物語で、本作はまさにそんな作品でした。出会うだけで、特別な喜びに満たされ、それが私にとって面白いものならば嬉しくなる。  幼い日から続く罪の記憶、そして新たに知る秘密の共有によって、とめどなく溜まっていく心の澱が淡々と丁寧に描写されて、その静かなトーンは変わることなく、苦い余韻を残して幕は閉じていく。  あぁ、好きだなぁ、と喜び嬉しくなった作品を、今回は紹介させていただきました。

5.0
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サトウ・レン

僕に優しくない世界

果てに待つ光景は――。

 とても素敵な掌編に出会ってしまった……のですが、本作をネタバレなしで書くのは難しい。でも、この作品は事前情報は持たずに読むほうが絶対良いタイプの作品だと思います。なので、できるなら、まず本作を読んでから、こちらに戻ってくるのをお薦めします。  ネタバレフィルタは付けましたが、今回はすべて明かすわけではなく、多少踏み込みつつも、できる限りネタバレには気を付けながら書きますが、たぶん勘の良いひとはちょっとの情報で構成、展開を察してしまうかもしれない。だから、もう一度言いますが、まず本作を読んでから、こちらに戻ってくるのを強くお薦めします。  良いですね。後で絶対に文句は言わないでくださいね。 〈桐島蝶子(ルビ きりしまちょうこ)、僕の彼女だ。……と言っても最近付き合ったばかりなので、「画家の卵なんて」といつ愛想をつかされないか、毎日冷や冷やしている。彼女持ちであると胸を張れない僕は、蝶子さんが言う通りの心配性なのだろう。〉  本作は〈現実〉という空虚さを嗤うように、あいまいさの上で成り立つ虚構の魅力に満ちた物語です。後書きにて、作者さん自身が〈泡沫〉という言葉に想を得たと書いていますが、いま見ている光景は本当に確かなものなんだろうか、と読者と語り手は物語の途中から不安な感覚を共有していく中で、まさしく泡沫の夢という情景が弾け、驚きとともに浮かび上がる〈確かに(見える)〉世界。でも……その〈確かに(見える)〉世界こそが泡沫の夢、あるいはそれまでと地続きにある世界の中……なのかもしれない、と世界は揺らいだまま、幕だけが閉じていく。素晴らしく好みの作品です。  読後、ふと蝶子の名前のモデルについて考えてしまいました。確信犯なんだろうなぁ、と思いつつ、読後の余韻を楽しみながら、このレビューは終わらせることにします。

5.0
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サトウ・レン

零時になったら、世界を変えよう

静かな余韻が残る逸品。

 午前零時、アプリ「零時のイルカ」に見せられる夢の中では、夜のみ開かれるカフェが開かれていて、年齢も性別も違えど、昼間の世界に生きづらさ感じる人達が思い思いに過ごしている。たんぽぽさんこと高校生の〈私〉はいつものようにここを訪れて、そこには管理AIのイルカさんがいて、見知った顔がある。でも知り合った人たちがいつまでもここにいるとは限らない。「零時のイルカ」は、生きづらさを抱えた者たちの生と死の境界にありながら、死を選んだ人達が最後に羽を休める場所としての役割を持つからだ。そして彼らは、後へと続く者達に同じ道を歩まないで済むように願いを託していく。  ネタバレはせずに書きますが、私の文章を読むより、ぜひ作品のほうを読んでもらいたいものです。  例えば、あなたは〈正しさ〉に心が呼吸を止めそうになったことがありますか?  硝子細工のように繊細な感情を揺らしながら、語り手が自身を見つめていく本作は、息が苦しくなるようなその感覚を持つひとにとっては心を寄り添わせたくなり、その感覚を経験していないひとなら新たな視野が広がるだろう、落ち着いた語りの、懐の広い物語になっています。なぜ死に、なぜ生きるのか、多くのひとが考え、多くの物語の中で描かれながら、どれだけの時間を経ようとそのための言葉が紡がれ続けるのは、誰もが納得できる誰かの答えが存在しないからでしょう。誰かにとって大切な誰かの答え(本作において、それは語り手になります)としての〈生〉と〈死〉への想いが浮かび上がってくるからこそ、胸を打たれるのかもしれません。私はそんな風に思いました。  静かな余韻が残る逸品です。

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サトウ・レン

清の千年物語

清少納言、現代を歩く。

 これはすごい。すごいぞ。素晴らしい作品だ……、と一気読みしたのち、その興奮がまだ覚めもしないうちに、気付けば応援レビューの画面(※ノベルアップ+での初読時の話です)を開いてしまったのですが、そこで手が止まってしまった。どう、この魅力を伝えればいいのだろうか。困った……。  事前に知らないほうがいい部分にも言及しようと思ったので、今回はネタバレありとしましたが、知らずに読んだほうが絶対に楽しい作品だと思うので、ぜひこの文章を読む前に実際の作品に触れていただけたら、と思います。  本作の主人公は「枕草子」の作者として知られる清少納言……と言っても歴史小説ではなく、彼女は二十歳の姿のまま現代を生きている。二十歳のまま不老不死となり、病気はすぐ治るし、手首を斬り落とされても死なず、千年の時を経ながら現代社会に溶け込む女子大生の清少納言が「清の千年物語」というブログを綴る、というSF中編なのです。清少納言がブログを書き、大学生活を楽しみ、司馬遼太郎を愛読する……というのはなんとも不思議な感じがしますね。ただブログという体裁を取っているので、もしかしたら清少納言の振りをした別の誰か、と読み方ができるのも楽しい。  本作は深い知識に裏打ちされたとても豊穣なフィクションです。日常を綴るというテイストだけでは終わらない物語としての色を強める展開もあり、そこについてこのレビューでは明かしませんが、実際には清少納言が紫式部とは面識がなかった、と言われているらしくて、またそのことが本作の導入に書かれているのですが、そんな物語にささやかな色を添えるための文章に思えた設定が、後半になって活きてくる内容になっています。  えっ、まだ読んでいない? では想像の旅へと行ってらっしゃい。

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サトウ・レン

絵画の記憶

真実を知った時、溢れるのは愛と想いと涙

1 読む前の印象や予想など(表紙やあらすじなどから想像したこと) まず表紙のイラストが芸術的である。今にも動き出しそうにも見え、躍動感もある。この表紙がイメージというのはビフォーアフターどちらなのだろうか?   とても気になる部分でもある。 作風とは、絵画や小説などにとって、心臓とも言えるものなのではないだろうか? 小説などでは作風はその作家の癖と深い関係も持つ。web小説などでは、ページの区切り方、表現、体言止めや述語。空行の使い方。いろんな部分から作風が決まり、なかなか変えられないものでもある。 絵画やイラストなどでは、タッチや色選び、構成などが作風の決め手だろうか? 2 物語は(どのように始まっていくのか?) 主人公の物忘れについてから始まっていく。彼の作風が何故変わったのか? その理由が分かると切なくて、辛いなと感じる。 3 良かったところ。印象に残ったところ。好きなセリフなど。 ”少し首を竦めておどけて言うそれは”のくだりが好きである。日本語にはいろんな言い方がある。ストレートに言うことは、伝わりやすいが含ませで言うことには、洒落が効いているように感じる。ストレートよりも印象にも残りやすい。 画家からの手紙の部分以降はとても感動しました。 想いは言葉にしないとなかなか伝わらない。しかし本心を知った時、胸に来るものがある。二人の結婚の経緯についても素敵だなと感じた。 まだ自分は記憶力は良い方だが、忘れることの怖さというものが、疑似体験できる。忘れられてしまうというのも辛いが、忘れたくないことを自分の意志関係なく忘れてしまうというのは、悲しい。そしてその未来が来ると分かっていたなら、とても怖いと感じるだろう。 4 自分が主人公の立場だったら やはり、主人公と同じことをするかもしれない。 以前人が何かを残そうとするのは、生きた証を残すため。というのを見たことがある。例えば自撮りや日記がそうだろう。それは自分の死に対しての本能なのだと感じる。 人が何を残したいかは、人それぞれ。 自分なのか、思い出なのか? それとも他人なのか。 彼が本当に残したかったのは心なのかもしれない。 5 物語のその先を想像して 恐らく天国で幸せに暮らすのだと思う。そして、その絵画を手にした人は愛を感じることができたのではないかと想像する。

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crazy's7

コトノハ薬局

言葉の音色と力・コトノハを処方する一族”音ノ瀬一族の現当主の抱えるものとは?

【物語の始まりは】 ある一本の電話により物語は始まっていく。これはコトノハ薬局を営む主人公の日常の断片の物語だと感じた。繋がりは感じるものの、一話ごととなっている。その中で段々とコトノハについてや、主人公の周りの者について明かされていくようである。ほのぼのしていて、風や音を感じる物語でもある。 【舞台や世界観、方向性(箇条書き)】 現代だろうか? 昭和初期や大正を感じさせるような雰囲気。 お洒落で風流。趣きがある。 【主人公と登場人物について】 主人公はコトノハ薬局を営んでいる。薬ではなく”言葉の音色と力・コトノハを処方する一族”音ノ瀬一族の現当主。言葉は、古くは”言霊”と言われていた。この物語に限らず言葉には力が宿っていると思う。それはよくも悪くも人に影響を及ぼす。この物語では一体、どのように作用するのだろうか? 主人公に想いを寄せている人物との関係が面白い。恋仲にはなれないが、彼の持って来てくれる海の幸や山の幸につられてしまう。彼は純情であり、純粋に想いを寄せてはいるが、方法が断り切れないようなスタイルである。それは断り辛いというよりは、つい誘いを受けてしまうタイプのも。 人とは不思議なもので、良い人だから好きになるという風に単純には出来ていない。振り回されているのか、振り回しているのか。どっちにも取れるやり取りや関係が面白いなと感じた。 【物語について】 主人公の日常を描いた物語である。風流さを感じたりする。とても言葉を大切にしているように感じる作品だ。一ページで一場面。内容は繋がってはいるが、話は日常の一コマという印象。 初めは何気ない日常から始まっていくが、従姉弟である音ノ瀬秀一郎が登場してからは少し風向きが変わっていくように感じた。恐らく物語が大きく動くのはまだ先だと思われるが、その伏線と感じられる部分は12話にも見られる。 レビューや感想を見ると、この物語は前半の雰囲気とは変わっていく物語なのだという予測がつく。 【良い点(箇条書き)】 ・コトノハは読者にも感じられると思った。 主人公達がやり取りをしている中で、ドキリとしたりハッとする言葉がある。 ・表現や言葉の使い方がとても綺麗だと感じた。 ・起伏のある日常であり、穏やかな日もあれば緊迫した日もあり、飽きの来ない物語だと感じる。 ・苦手だと感じているはずの自分に想いを寄せる俊介との関係が時々微笑ましい。 ・段々と主人公の背負っているものが明かされていく。 ・言葉(コトノハ)とは確かに、相手を勇気づけたりもできるが、心を殺すことも容易であると改めて感じた。 ・いろいろと言葉について考えさせられる物語である。 【備考(補足)】13ページまで拝読 【見どころ】 恐らく序盤ではこの物語の魅力を存分に味わうことは難しいと思われる。しかしながら美しい言葉で綴られる日常からは、コトノハの力の片鱗を垣間見ることが出来る。主人公が背負っているものは決して軽いものではない。それはあらすじからも想像ができる。 主人公は何故この若さで音ノ瀬一族の現当主なのか? そこにも秘密があるのではないだろうか? 徐々に明かされていくコトノハの力や音ノ瀬一族もついて。主人公はコトノハの力が強い為に、言葉を発するのにも気を遣う。一見、優しい穏やかな日常に見えても気疲れをしているのではないだろうか? この物語を通し、自分は言葉の力について改めて考えさせられた。 あなたもお手に取られてみてはいかがでしょうか? 読了部分ではまだ明かされていない部分がたくさんあります。 これから明かされていくであろう、音ノ瀬一族の核心・暗部とは一体? この物語の魅力に是非、触れてみてくださいね。お奨めです。

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crazy's7

山に人魚

「悲しくも優しい純愛物語」

1 読む前の印象や予想など(表紙やあらすじなどから想像したこと) 表紙がとっても素敵。貼り絵のような水彩画のような。 人魚と言えば海というイメージだけれど、この物語では何故か山の、しかも高いところに祀られているらしい。 それは、山に居たからなのか? それとも何かわけがあってのことなのか。もしくは、ただの噂なのか? それがこれから分かっていくのではないかと思われる。 2 物語は(どのように始まっていくのか?) 主人公は、ある噂の真相を確かめるべく滋賀県のとある山へやってきた。その噂は良くないものが多く、迷信なのではないか? 偶然なのではないか? と思われるものも含まれる。科学技術の発展や医学の進歩により今まで謎とされてきたものが解明されてはいる。しかし、解明されておらず不可思議なままのモノも多い。そう考えると、この噂が単なる偶然や迷信だとは言い切れないのではないだろうか? 主人公もきっとそんなことを思ったからこそ、この山へ真実を確かめに来たのかも知れない。主人公はまるで導かれるかのように、ある場所へとたどり着くのであった。 3 世界観について 現代ファンタジーもしくはあやかしものの様な世界観。舞台は実在する県であり、現実と空想の狭間の様な雰囲気をもつ。 主人公がある場所へたどり着くと、確信へと入っていく。果たして真相は⁈ 4 良かったところ。印象に残ったところ。好きなセリフなど。 ・構成がとても良い。 ・現在から過去への流れがとても自然であり、物語に入りやすい。 ・現実と幻想の区別がつき辛いため、実際にあったことなのでは? と錯覚してしまう。 ・ユーモアのセンスが凄すぎる 「ここの海って~遠のいたのだ。」までのやり取りなどがとても面白い。 ・二人の心の距離が近づいていく様子がとても丁寧に描かれており、読んでいて癒される。 ・「私だったら~とてもいいと思うわ」までのセリフがとても好きである。 ・惹かれ合う二人と、彼の人生を通した理想と現実、ヒューマンドラマ部分がとても好きである。 5 お奨めしたい部分 すこしネタバレになってしまうかも知れないが、この物語は噂の真相を確かめようとした人物がその場所へたどり着き、ある人間と人魚の人生について語られていく。種族の違う二人は惹かれ合うが、子を成すことはもちろんできない。それでも寄り添い、ある秘密を抱えていた人間はこの人魚と日々を共にすることで、心が癒されていく。とても優しい純愛であり、憧れさえ抱いてしまうほどに二人の絆は強いものだ。 そして、人間の職を通して語られていく理想と現実。人のはどんなに才能があろうとも、他者の手によって違う部分を売りとされることがある。それは自分たちにとって身近なことだと思う。共感できる部分が多く、理不尽さも感じてしまうがそれが社会であり、人間の求めているものなのかもしれない。凄く考えさせられる物語である。 愛とは何か? について今一度深く考えさせられる。 6 物語のその先を想像して 人魚には極楽浄土のような概念はないかも知れない。しかし三人はあの世で仲良く暮らしているのではないかと想像する。 あなたもお手にてられてみてはいかがでしょうか? 愛する人のいる方には特に心を打つ作品であり、まだ恋をしたことのない人にとっては憧れを抱く物語だと感じました。 おススメです。

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crazy's7

【書籍化】冴えない俺と、ミライから来たあの娘

複雑な心境になる物語である。

1 読む前の印象や予想など(表紙やあらすじなどから想像したこと) 本当の親子かどうかでも変わって来る。実の父に恋をするのかどうか? 母の再婚相手なのだろうか? と思った。実の親子だったらちょっと怖いなと感じてしまった為。 ただこの恋が、この二人の間とは限らない。別の可能性も考えられる。あらすじからはミステリアスな部分もある。 逆に父が娘に恋をするというパターンもあるかもしれないが。 2 物語は(どのように始まっていくのか?) 娘側の最後の一日から始まっていく。ちょっと複雑な心境になる始まりだと思う。 その後本編に入り、主人公の日常と恋事情について語られていく。そこにあるのは、都会での理想と現実。都会でなら人生が変わると思われがちだが、実際はその逆だと思う。都会の喧騒から離れ田舎暮らしで幸せを手に入れた人も沢山いるだろう。能力があるから輝けるということを忘れ、都会だから上手くいくと考える人は多いのかも知れない。彼もまた、通勤だけでゲンナリしながらそれでも耐えているような毎日を送っているようである。そんな彼に突然訪れる、非日常とは。 3 世界観について 舞台は現代である。未来から少女がやって来ることから、SFでもあるようだ。 現代の東京が舞台。地方から都会にやってきた人間の理想と現実について描かれている。 地方から都会に暮らすと一番つらいのは電車だと思う。元々その地に暮らしている人は、慣れているから耐えられるのだろうか? それとも、そうまでして都会に住み続けたいの府だろうか? とても不思議である。 4 良かったところ。印象に残ったところ。好きなセリフなど。 *上記でも書いたように、都会での理想と現実の部分にリアリティを持たせた心理描写が良い。 自分も経験したことがあるので、思わず感情移入してしまった部分である。 *一般的な人が主人公なのが良い。 よくあるハイスペックな人物というわけではなく、かなり身近に感じるごく普通の一般的な人物が主人公。すなわち感情移入がし易いと思われる。 *予定調和説明 小説内で分かるだろうと説明を省き、結局伝わらないというものはよく見かけるが、このことについて説明が足されているのが良いなと感じた。言葉は聞いたことはあるが、詳しく知らなかったため少し驚いた部分がある。 *家族という概念について。 家族とは初めから家族だから家族なのだろうか? と。もし仮に未来からまだ見ぬ家族が現れたなら、恋愛対象になったりよこしまな気持ちを抱いたりするものなのだろうか? そもそも近親関係の交わりが禁止されているのは、近親者で交わろうとしているからであり、そう考えると知っているかどうかは関係ないのかも知れないとも感じた。 *突飛なことが起こるわけではない日常 未来から少女と彼との暮らしはごく普通。少し悪戯心もあるようだが。 父子家庭のような自然な日々に、未来から来たことを決定づけるような行動が散りばめられている。 5 お奨めしたい部分 二万文字の読了では、少女の目的は想像し辛い。父に会いたかったという単純なものではないのではないかと想像する。 もしかしたら、普通の日常こそが彼女の欲しかったものなのかもしれない。伏線と感じる部分もあり、この先どうなっていくのかとても気になる作品である。 この作品で気になるのは”予定調和”。彼女がこの世界に来ることは必須なことは予想がつく。主人公はまだ過去の状態だが、主人公が少女に出逢う前と少女の人生の間の時間には、この出来事が作用することが必要だと考えられるから。考えるとややこしくなるが、少女が産まれるためにはこの出来事はなくてはならないことなのだと思う。 6 物語のその先を想像して 005 【滞在期間三日目:たまには、手料理なんてどうかな?】まで読了での予想。 気になるのはあらすじの”夜明けとともに予告なく訪れた別れの先で、彼がたどり着いた結末とは? そして千花が戻ったミライの世界で彼女を待っていた物とは?”の部分。未来が変わってしまうのではないかと想像する。それは良い方向だと想像するが、未来が変わってしまうのは罪にあたる様なので、ハッピーエンドとも言えないのかも知れない。 あなたも是非お手に取られてみてくださいね。おススメです。

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crazy's7

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小説家になろう恋愛書籍化コミカライズ連載:67話

ガリ勉地味萌え令嬢は、俺様王子などお呼びでない

人は見た目じゃない

第一部は俺様王子編。 傲慢俺様なイケメン王子が『良い』と思えるのは、ヒロインが王子のことを好きになることが前提かつ、ヒロインとのふれあいで傲慢で俺様なだけではない王子の奥底にある良さ等が見えてくるからであって。 ヒロインに好きな人がいて王子のことはこれっぽっちも好きではない場合、権力と自身の魔法の力に物を言わせて人の話を聞こうともせず迫ってくるような俺様っプリは、『キュン』とするどころか『ただただ壮絶に面倒くさい』としか思えないんだな……と乙女ゲーマーとして目から鱗が落ちる思いがした。この手のタイプは乙女ゲではわりとメイン攻略対象として存在するので……前提と視点が違うとここまで意味合いが変わってくるのか……と。 王子の言動と彼自身が迷惑でしかないヒロインと、王子に憧れているヒロインの友人との会話での分かりやすい見え方の違いにめちゃめちゃ納得した。 第二部は俺様王子の弟の腹黒王子編。 第一部は学園内でことが収まっていたけれど、第二部はガッツリ王家が絡んできてヤバさが一段とアップ。 人の話を聞かない第一王子の次は、やはり人の話を聞かない第二王子に王妃と、この国の行く末が非常に不安になる。 が、番外編で第三王子が登場し、なんとかなるのではないかと一息つける。 物語全体を通して会話のテンポがよいので読み進めやすく、最初から最後まで一気に楽しく読めた。 いつも全力で好きを押し出すシャリーナと、困惑しながらも段々惹かれていくリオルの二人が可愛い、物凄く可愛い。 見た目は地味なガリ勉少年で、しかも魔法が使えないという欠点があるけれど、シャリーナの為に己が頭脳と持てる力を全力で使って戦うリオルは本当にカッコイイ。

小説家になろう恋愛連載:66話完結

【完結】セクハラ貴族にビンタしたら社交界を追放されたので、田舎で人生やり直します。~一方、そのころ王都では~

難アリ家庭から逃げた先で努力し幸せを掴む物語

親の歪んだ教育方針により世俗に疎くすれていないヒロインのため色々とおぼこいが、助けてもらった先の家で色々と教わり、『自分』を出せるようになっていく変わりようが良かった。こういう、若干テンションのおかしいヒロインは好き。 ヒーローも少々珍しいタイプで好ましかった。 さくさくとテンポ良く話が進むため、じれじれな恋愛ではあるがイラつくほどの長さではなくニマニマと過程を楽しめた。悪党が断罪されているのもよき。 軽めですっきりと読了できる作品だった。

小説家になろう恋愛連載:119話完結

美醜あべこべ世界で異形の王子と結婚したい!

男性のみ美醜逆転の異世界に美少女イケメンハンター出陣します!

前世で喪女だった後悔からイケメンにガツガツの肉食系女子となった美少女主人公。前世含めて一目ぼれした異形と言われるほどの美少年(前世観)にアプローチをしてさっさと婚約者候補に収まり、誰も寄せ付けないいちゃらぶカップルになります。 外面もよく美少年に目がないですが、自分主観で醜いからと嫌うことはありません。恋愛対象ではなくてもちゃんと人として接する、人として優しい女の子だからこそ素直にその恋路を応援することができます。美少年と付き合うためにしていた善人の外面がよすぎてまわりからは誤解されてもいますが、そこも美醜逆転独特の笑いポイントとして楽しめます。 義理の弟を可愛がったり、不遇なイケメンも多数出てきて、乙女げー系小説っぽい世界観な感じですのでさくさく読めて最後まで一気に楽しめます。 ヒーローにも秘密がありちゃんと後々秘密を打ち明け合って、主人公が面食いなのも全部わかってもらって思いあうラブラブ小説です。 最後までぶっとんだ美醜観によるドタバタギャグが楽しいですし、完結済みなので一気に最後まで楽しめます。 世界観も楽しくもたくさんのキャラクターもそれぞれ個性がありいい人が多く、美醜逆転好きだけではなく乙女ゲー系の愛され主人公恋愛物が好きな人にもおすすめです。