平成最後の夏を描いた、痛くて切ない、ちょっぴり歪んだ青春恋物語。 主人公はちょっぴりパッとしない高校生の小秋。そんな小秋と親友の美少女、真夏との青春の1ページを切り取ったような本作。 青春小説特有の複雑な心情やエネルギッシュな躍動感がこの作品からは感じられ、胸がギュッと締め付けられたり、ドキドキと高鳴ったりします。 大人になった今だからこそ感じられる、青春の懐かしさがなんとも心にしみます。 そして物語の構成も圧巻で、約2万文字で読者の気持ちを最高潮に高めてクライマックスを迎えさせてくれます。 素敵なイラストも必見! 田舎の駅から見える爽やかな海。 青い空。 白い雲。 二人の女子高生。 このイラストが読後、違うものに見えてくるんだから作者の演出は憎い。 レビューを書いている今もまだ胸がドキドキしています。 心を動かす作品。是非あなたにも読んでほしい。
「Evil Revenger 復讐の女魔導士」では様々な心の動きがありますが、そのどれも強くはあるのですが共感もしくは理解ができました。 それは現代を生きる私たちにも通ずるところがあるからだと感じました。 故にこの作品は「ダークファンタジーの形を取った人の心を描く物語」だと私は考えます。 何より描写力が素晴らしく、すいすい読めてしまいます。 文章構成も良くできており、そのおかげでダークファンタジーにも関わらず読後感がとてもよかったです。 心を揺さぶられたいと思うなら、この作品をお薦めします。
進路希望調査票に「壁」と書いてきた女子生徒との、一対一の進路相談に挑む女教師のお話。 テンポよく切れ味のあるコメディです。場面固定かつ一対一の掛け合いという形式で、特に語り口の起伏や言い回しの妙で引っ張っていく内容となっており、つまりはショートコントのような軽妙な掛け合いの妙味を、小説という形式の上に再現しているところが魅力的です。 普通にコメディとして楽しく読んでいたのですが、でもこれ真面目に読むと実はものすごい勢いで詰んでいるのでは、というところもなんだか愉快でした。真摯に生徒のことを思ういい教師ではあるのだけれど、でも生徒自身の自主性を尊重しすぎた結果明らかに悲劇を助長している先生。そして想像以上にどうしようもなかった『壁』の正体。一切の遠慮なく一方的に垂れ流される欲望のおぞましさに、自身に向けられた暴力性すら跳ね除けようとしない先生の健気さ(あるいはヘタレっぷり)。読み終える頃にはなんだかDVによる共依存にも似た関係性が成立しつつあるようにすら読めて、いやもしかしてこの人らある意味相性ぴったりなのではと、そうごまかしてはみたものの結構身につまされる部分もありました。人の振り見てなんとやら。 単純に個々の掛け合いそのものも面白いのですけど、でもこうして見ると「いやいや結構な惨事ですけど?」と、そんな状況をでもサラリと飲み込んでしまえる彼女らのタフさにも笑えてしまう、つまりはしっかりキャラクターの魅力をも見せてくれる素敵な作品でした。
こちらはユーザー用の機能です。