ストレートチルドレンとして暮らしていた六歳児がある日教会に聖女として拉致されてしまいます。 歴代の聖女は誰もが指名されるまま聖女になっていましたがこの主人公はただ働きはしないと宣言し、なんと教皇猊下からお給金をもらって聖女のお仕事をしているのです。 そんなお金大好き聖女様ですが、お仕事はきっちり聖女としての顔を振りまきますし、その力は本物。はちゃめちゃながら色んな問題をどんどん解決していきます。 王子様からの求愛もなんのその、住み込みで働いているだけなので人気が終わったら街へ戻るのだと息巻きながら、普通では考え付かないような振る舞いで聖女として大活躍していきます。 世界観、宗教観も楽しくて皮肉気でありつつ図太く可愛い聖女が最高です。 聖女は希望通り一般人に戻れるのか!? 聖女のはちゃめちゃな日常を楽しみながら結末を見てください!
かなり前、恐らく8〜9年くらい前に読ませて頂いた作品ですが、今でも心に残っている1作です。 というか、この作者さんの作品は大抵心に残っています。 冒頭から丁寧な描写で、ゆっくりと物語に引き込んでくれます。 語られる雨の国の素朴な生活や人々の描写も興味深かいものでした。 こういう風に、その土地そのものや、そこで生きることの意味をしっかり作品から感じられるところが本当に素敵だなと思います。 それに、何より、仕方なしに生まれていったしきたり、考え方を否定するような結末にならずに、逆にその土地で培われた少年や少女の優しさや強さがラストから感じられて、とても良かったです。 最終的に肯定にも否定にも結論をつけられない主人公の立ち位置も良く、主人公ではなく、主人公を通して「異国の地」を描いているという印象の作品です。 そのおかげで、読み手も偏った見方ではなく、ある種、その多くの風習に敬意を持って読めるのが、いいな、とも思いました。 ラストに垣間見える希望、未来への期待も心地よかったです。 個人的にはイアン君が好きでした。 やさしそうじゃないのにやさしい男の子って、いいなと思います。 読ませていただいたことを感謝したい作品です。
進路希望調査票に「壁」と書いてきた女子生徒との、一対一の進路相談に挑む女教師のお話。 テンポよく切れ味のあるコメディです。場面固定かつ一対一の掛け合いという形式で、特に語り口の起伏や言い回しの妙で引っ張っていく内容となっており、つまりはショートコントのような軽妙な掛け合いの妙味を、小説という形式の上に再現しているところが魅力的です。 普通にコメディとして楽しく読んでいたのですが、でもこれ真面目に読むと実はものすごい勢いで詰んでいるのでは、というところもなんだか愉快でした。真摯に生徒のことを思ういい教師ではあるのだけれど、でも生徒自身の自主性を尊重しすぎた結果明らかに悲劇を助長している先生。そして想像以上にどうしようもなかった『壁』の正体。一切の遠慮なく一方的に垂れ流される欲望のおぞましさに、自身に向けられた暴力性すら跳ね除けようとしない先生の健気さ(あるいはヘタレっぷり)。読み終える頃にはなんだかDVによる共依存にも似た関係性が成立しつつあるようにすら読めて、いやもしかしてこの人らある意味相性ぴったりなのではと、そうごまかしてはみたものの結構身につまされる部分もありました。人の振り見てなんとやら。 単純に個々の掛け合いそのものも面白いのですけど、でもこうして見ると「いやいや結構な惨事ですけど?」と、そんな状況をでもサラリと飲み込んでしまえる彼女らのタフさにも笑えてしまう、つまりはしっかりキャラクターの魅力をも見せてくれる素敵な作品でした。
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