将棋にはまって冷たくなった夫に少しでも近づく為、新妻が健気に将棋を勉強するという月9のドラマでありそうなお話……と思ったら、繰り出されるラノベチックな設定や展開の数々。 勢いのままにエキセントリックなキャラクターがかき乱して来たり、少年漫画のような熱さがあったり、ホロリと来る展開があったり……と思ったらやっぱりラブラブしたりと、感情をとにかく揺さぶられます。 まるで戦型や局面によって様々に味わいを変える将棋の対局のように、様々な面白さが詰め込まれながらも互いに引き立て合っている素晴らしい作品です。 文体も読みやすく、対局の展開も雰囲気で楽しめるように考えられているので、将棋に詳しくない方にもおすすめです。
「世界を一つの物語とするなら、俺はその主役として生きたい」 「世界を一つの物語とするなら、私はその脇役として生きたい」 《主役理論》を掲げる主人公・我喜屋未那と、その正反対の《脇役哲学》を掲げる少女・友利叶。 主役理論。それは運に頼らず、楽しい青春を謳歌するために積極的に行動する。 脇役哲学。他人に振り回されない生活を送るために、余計なことをしない。 どちらも理想の青春を送るために導き出した行動方針だが、二人の結論は正反対だった。 そして生き生きとした日常の先に迎えることになる。 「少しずつ変化していく日常は、 いつか望んだ奇跡だったから、 そのせいで、失ってしまったものの大切さに、 最後まで、気づくことができなかった。」 作者で察する方もいると思いますが、読んでいてどんどん胃が痛くなってくる作品です。 もし感想をTwitterで呟きながら読んで頂けると、既読者が喜びます。
この作品は、百日分のエピソードからなるオムニバス形式に近い学園ラブコメである。カクヨムコンでも一位か二位を取っていたように記憶しているが、そのことからも品質は保証されている。 著者の兎谷あおい先生はこういった恋愛ショートストーリーを得意とする作家であり、Twitterの140字小説でも毎日良い小説を書かれている。そんな兎谷先生の作風と設定が噛み合った結果、飽きの来ない日常ものラブコメとなったのだろう。(日常の問題点が飽きの早さであり、それを感じさせないという点で最上級の賛辞のつもりである) 文体は大変柔らかく、文章から漂う空気が穏やかで読みやすい。セリフも違和感がない。強いて言うならやや女性向けの文体・言葉選びになるかもしれない。(内容は恐らく男性向けである) 合う合わないはあるだろうが傑作と呼んで間違いはないので、まず最初の数話だけでも読んでみてほしい。